日韓関係の改善のために


韓国最高裁による新日鉄住金への賠償を認めた判決以来、日韓関係が冷え込んでいます。これは日韓両国にとって不幸なことと言わざるを得ません。

自民党政権の外交センスのなさが国益を害しているというべきです。自民党政権の外交政策を検討します。




1 はじめに

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筆者:柳川


(1)韓国との関係悪化

2018年10月30日の韓国最高裁判決による徴用工損害賠償判決から数か月の間に、我が国と韓国との互いの国民感情がきわめて悪化した。しかも、我が国の政府そのものが国民の間に反韓感情を煽るような発言を繰り返しており、韓国においても少なくない国民が日本に対して決定的な反感を持つに至った。

これは、冷静に考えれば、我が国の国益にとって大きなマイナスなのである。ただでさえ、現在の我が国の最近の近隣諸国との外交関係は、良いとは言えない状況にある。そのような中で、日本に対して良好な関係を構築しようとしていた国家を、あえて敵に回す行為が愚かであることは言うまでもないことであろう。

ことの発端は、多くの国民が誤解しているように、韓国最高裁による新日鉄住金への賠償を認めた判決そのものではない。真の原因は、それに対する我が国政府与党の対応の拙さの方である。その後で起きたレーダ照射問題は、日韓の関係の悪化の中で起きた派生的な問題にすぎないと言うべきである。


(2)周辺諸国との関係は良いとは言えない。

前述したが、当時から我が国と近隣諸国との関係は決して用途は言えない状況である。

北朝鮮との関係について言えば、トランプ大統領、文大統領、習近平国家主席などが、冷静に金正恩氏とのコンタクトを図って実務的な関係を構築していた中で、当時から現在まで安倍総理(当時:以下肩書は当時のもの)、菅総理は北朝鮮との外交関係の糸口さえ見いだせない状況である。

中国との関係は当時は改善の兆しを見せつつあるものの、尖閣列島の問題は別にしても、歴史問題でいつ火を噴いてもおかしくない火種を政権内部にかかえている。自民党には、南京虐殺をねつ造だなどと否定している閣僚や元閣僚が、原田環境大臣、稲田元防衛相、下村元文部科学相など数多く名を連ねているのだ。

そもそも安倍総理自身が「私たちは、河村たかし名古屋市長の「南京」発言を支持します!」という意見広告に名を連ねた経歴があるのだ。この河村市長の発言とは、南京事件に関し「いわゆる虐殺行為はなかった」とするものである。現時点では中国側にも日本との関係を改善したいという事情はあるものの、これでは本気で信頼し合える関係になることは困難だろう。

ロシアとの関係もよいとは言えない。安倍総理は国民の同意を得ることもなく勝手に2島返還と言い出して、後々禍根を残すようなことを繰り返しながら、ロシア側の信用も失いつつある。北方領土を取り戻した首相として名を残したいという安倍総理の名誉欲が、拙劣な外交につながって我が国の国益を損なっているのだ。

もちろん、プーチン大統領から「あらゆる前提条件をつけず、年末までに平和条約を結ぼう」と言われて苦笑しただけという情けない状況では2島返還も覚束ないだろう。ロシアからもいいようにあしらわれているのである。

繰り返すが、このような状況において、友好国である韓国をあえて敵の側に追いやることは、愚かとしかいいようがない行為なのである。


2 本事件の本質を論じる

(1)ことの起こりは

ア 安倍総理の対応のまずさ

安倍総理は、徴用工問題についての10月30日の韓国最高裁判決について、「国際法に照らしてあり得ない判断だ。毅然と対応する」と表明した。また、河野外相は李洙勲駐日韓国大使を呼び、抗議の意を伝えている。

朝日新聞によると、翌31日には「自民党は31日、外交部会などの合同部会を党本部で開き(略)、中曽根弘文元外相は『韓国は国家としての体をなしていない』と指摘。新藤義孝元総務相も『怒りを通り越してあきれる』と批判した」(※)という。

※ 2018年10月31日朝日新聞DIGITAL記事「『怒り通り越しあきれる』自民部会、韓国判決に批判続出」より

すなわち、韓国を悪者にし、日本側が被害者であるかのごとき発言を繰り返したのである。

しかし、これは韓国の国民の側から見れば、ナチによるユダヤ人虐殺について、アンネ・フランクの遺族を悪者にして、アイヒマンを被害者だと言い募るようなものであろう。韓国のみならず、国際的にみても、支持を得られるようなものではない。まさに自民党は、ネオナチならぬネオ軍国主義と同一視される愚を犯したのである。

また、この安倍総理の主張は、以下に説明するが、これまでの政府の見解とも明らかに異なっているのである。国際法に照らしてあり得ないという、安倍総理の主張の方が国際法に照らしてあり得ないのである。

イ 徴用工問題とは

(ア)日本による植民地支配

そもそも徴用工問題とは、日本による韓半島の植民地支配の中で起きた事件である。この支配は、韓国国民の名前まで日本風に変えようとする世界的にみても類例のないものであった。

当然のことながら植民地支配に対する、当時の韓国民衆の反発も強く、独立・解放にむけた抵抗運動が繰り返し起きている。これに対する日本側の弾圧は熾烈を極め、3.1独立運動(万歳事件)などに対して日本側は徹底的な弾圧、国民の虐殺等を行っている。

韓国国民の側から見れば、訴訟原告の側こそが日本の旧軍国主義政府の被害者であり、犠牲者なのである。

(イ)強制徴用の実体と韓国側の意識

当時の日本は、韓半島は日本の一部であるとして、民衆を徴兵・徴用しているが、これが韓国にとっては不正なものと考えられていることは当然である。一例を挙げれば、沖縄には摩文仁の丘に、沖縄戦で亡くなった方などのお名前(※)を記したモニュメントがあるが、少なくない韓国人の遺族が「末代までの恥」として名前を記すことを拒否している。

※ 一部にお名前の不明な方があり、「○○の子」などの形で記されているケースもある。

当然のことながら、韓国民衆が日本による支配を納得していないのであるから、徴用の実態も日本人に対するものと同じようなものにはならなかった(※)。まさに“人狩り”と呼ぶにふさわしいものだったのである。

※ 外村大「朝鮮人強制連行」(岩波新書2012年など)

また、労働の環境も劣悪を極めて労災職業病などによる死亡率も高く、賃金は日本人の半分程度で、その賃金も強制貯金とピンハネで手元には残らなかったという(※1)。また、政府の秘密を守るために殺害されたケースさえ報告されている(※2)

※1 山口公一「大東亜共栄圏の中の植民地朝鮮」(歴史教育研究会『日本と韓国の歴史共通教材をつくる視点』(梨の木舎2003年))など

※2 林えいだい「松代地下大本営」(明石書店1992年)による。

ウ 韓国側の反発は当然である

安倍総理など自民党の主張は、かつての日本による韓半島の植民地支配を正当化するものと受け取られかねないものである。また、今回の判決について、ネットには韓国を批判する論調が溢れており、マスコミも韓国を批判すれば読者受けするからだろうが、批判的な論調が目立っている(※)

※ この判決に対して、例えば徳島新聞社はその社説で「徴用工訴訟 未来志向揺るがす判決だ」とし、西日本新聞は「日韓「未来志向」に再び難題 元徴用工訴訟判決」と論陣を張っている。しかし、「未来志向」と「過去の正当化」の区別がついていないこれらのマスコミの情けなさにはあきれるばかりである。過去を正しく見つめなければ未来志向などあり得ないだろう。

この種の問題について、比較的冷静な論陣を張る傾向のある東京新聞や朝日新聞さえ、やや腰が引けているように見えるのはどうしたことなのだろうか。

日本側の韓国批判の論調には、そもそもの事の起こりが日本による不当な植民地支配と強制連行にあることを忘れているのである。このような論調を韓国国民が見れば、反発をするのは当然である。

ここまで韓国の世論が激高すれば、韓国政府も国民の世論を気にせざるを得ないことは当然だろう。安倍政権と我が国の無責任な“識者”たちのこの問題に対する反韓の論調が、韓国の対日感情を悪化させ、我が国の国益を損なっているのである。


(2)安倍総理の主張に法的な正当性はあるのか

ア 安倍総理の主張の根拠

安倍総理の主張は、「1965年の日韓請求権協定で原告の損害賠償請求権が消滅した」とするものである。しかし、このような主張は理に適ったものではない。以下、その根拠について論証しよう。

イ 国会における政府答弁

まず、かつての政府は、韓国の個々の国民の請求権が日韓請求権協定ではなくならないと明言していたのである。

これについて第122回参議院予算委員会において、共産党の上田耕一郎議員の質問に対し、政府委員(柳井俊二外務省条約局長)が明確に1965年の日韓請求権協定について「個人の財産・請求権そのものを国内法的な意味で消滅させるものではない」としているのだ(※)

※ 実は、日本国政府は、サンフランシスコ平和条約(1951年)及び日ソ共同宣言(1956年)において、連合国等と同様な請求権放棄条約を締結している。そのため、被爆者から日本国政府に対して、日本政府が米国に対する損害賠償請求権を消滅させたとして損害賠償請求を受けたとき、国は「日本国はその国民個人の米国及びトルーマンに対する損害賠償請求権を放棄したことにはならない」と主張したのである。柳井局長の国会答弁はこの日本国政府の主張と整合させるためのものであった。(山本晴太「日韓両国の日韓請求権協定解釈の変遷」による)

やや長いが、該当部分をそのまま引用しよう。

【柳井俊二外務省条約局長答弁】

ご承知のように、昭和四十年の日韓請求権・経済協力規定の二条一項におきましては、日韓両国及び両国国民間の財産・請求権の問題が完全かつ最終的に解決したことを確認しておりまして、またその第三項におきましては、いわゆる請求権放棄についても規定しているわけでございます。これらの規定は、両国国民間の財産・請求権問題につきましては、日韓両国が国家として有している外交保護権を相互に放棄したことを確認するものでございまして、いわゆる個人の財産・請求権そのものを国内法的な意味で消滅させるものではないということは今までもご答弁申し上げたとおりでございます。

下線強調:引用者

これを見れば明らかに、日本国政府は公式に、個人の請求権は消滅していないとしているのである。なお、柳井局長は、国会で同趣旨の答弁を他にも繰り返して行っている。当然のことながら、この国会答弁は公開されており、韓国を含めた世界中の誰もが読むことができるようになっている。

安倍総理が、過去の請求権協定の内容について、何の法的な根拠も示さずに恣意的に(勝手に)解釈を変更することができるとすることの方が、国際法に照らしてあり得ないことなのではなかろうか。

ウ 日本国内の裁判における日本国政府の主張

今回、なぜかあまり報道されていないが、日韓請求権協定と同じ1965年に我が国で「大韓民国等の財産権に関する措置法」が制定されている。この中で「日本国又はその国民に対する債権等」について「昭和四十年六月二十二日において消滅したものとする」とされている。

すなわち、「日本国又はその国民に対する債権等」は日韓請求権協定によっては消滅していないために、わざわざ日本の国内法で消滅させたわけである。分かりやすく言えば、請求権は実態としては存在しているが、日本国内法によって請求することはできないと法律的な手当てがされたわけである。

そして、不二越二次訴訟の一審における国の主張は、「原告らが上記各請求権に基づく請求をしても、日本国及びその国民はこれに応ずる法的義務はない。ここで、法的義務がないというのは国内法的に消滅したという意味ではなく、韓国国民が「請求権」をどのように法的に構成して、日本国及びその国民にたいして請求しても、日本国及びその国民は、これに応ずる法的義務がないという意味である」(※)というものであった。すなわち、請求権の存在そのものは認めたのである。

※ 山本晴太前掲書による。

最判2007年4月27日も政府の見解を認め、「請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではなく、当該請求権に基づいて訴求する権能を失わせるにとどまる」としている。

そうなると、韓国国内における在韓日本企業に対する請求権については行使することが可能という判断にならざるを得ない。

エ 韓国最高裁の判断

一方、今回の韓国最高裁の判決は、個人請求権が日韓請求権協定によっては消滅していないという論理構成はとっていないのである。時事通信社の2018年10月30日の記事によると、韓国最高裁(多数意見)の判断は、「反人道的な不法行為」についてまで、日韓請求権協定の対象には含まれるわけではないとするものである(※)

※ 時事通信社の記事をそのまま引用すると「『日本政府の朝鮮半島に対する不法な植民地支配および侵略戦争の遂行に直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の日本企業に対する慰謝料請求権』は、請求権協定の適用対象に含まれていない」とされている。なお、韓国政府は日韓請求権協定によって個人の請求権も消滅するという立場をとっていた。

なお、別意見(少数意見)として、同協定によっては個人の請求権が消滅したとみることはできない(※)とすることが挙げられている。

※ これも時事通信社の記事を引用すると、「原告の損害賠償請求権も請求権協定の適用対象に含まれているが、請求権協定により、その請求権に関する韓国の外交的保護権が放棄されたにすぎず、個人の請求権が消滅したとみることはできないため、原告は被告を相手取り、わが国で損害賠償請求権を行使することができる」とされている。

すなわち、韓国最高裁は、日本政府のかつての公式見解からさらに一歩進み、そもそも「反人道的な不法行為」については、日韓請求権協定の範囲に含まれないとしているのである。

オ 日本の弁護士有志の声明

2018年11月5日に、日本国内の弁護士の有志から「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」が出された。これは安倍総理を支持する無責任な“識者”などとは異なり、法律の専門家だけにきちんとした法的な論理だてがなされている。

まずこの声明は、「元徴用工の問題の本質は人権問題である」としている。たんに法律問題とせずに、人権問題であるとしたことにもこの声明には大きな価値があるといえよう。

そして、先述した最高裁判例を挙げて、「日韓請求権協定により個人請求権は消滅していない」としている。

【元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明】より

安倍首相は、個人賠償請求権について日韓請求権協定により「完全かつ最終的に解決した」と述べたが、それが被害者個人の賠償請求権も完全に消滅したという意味であれば、日本の最高裁判所の判決への理解を欠いた説明であり誤っている。他方、日本の最高裁判所が示した内容と同じであるならば、被害者個人の賠償請求権は実体的には消滅しておらず、その扱いは解決されていないのであるから、全ての請求権が消滅したかのように「完全かつ最終的に解決」とのみ説明するのは、ミスリーディング(誤導的)である。

そもそも日本政府は,従来から日韓請求権協定により放棄されたのは外交保護権であり,個人の賠償請求権は消滅していないとの見解を表明しているが,安倍首相の上記答弁は,日本政府自らの見解とも整合するのか疑問であると言わざるを得ない。

また、この声明は以下のように、政府と企業に対して取り組みを求めている。これは、反韓感情を煽る政府自民党の主張よりも、はるかに我が国の国益に沿った主張というべきである。

【元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明】より

新日鉄住金もまた、元徴用工の被害者全体の解決に向けて踏み出すべきである。それは、企業としても国際的信頼を勝ち得て、長期的に企業価値を高めることにもつながる。韓国において訴訟の被告とされている日本企業においても、本判決を機に、真の解決に向けた取り組みを始めるべきであり、経済界全体としてもその取り組みを支援することが期待される。

日本政府は、新日鉄住金をはじめとする企業の任意かつ自発的な解決に向けての取り組みに対して、日韓請求権協定を持ち出してそれを抑制するのではなく、むしろ自らの責任をも自覚したうえで、真の解決に向けた取り組みを支援すべきである。

私たちは、新日鉄住金及び日韓両政府に対して、改めて本件問題の本質が人権問題であることを確認し、根本的な解決に向けて取り組むよう求めるとともに、解決のために最大限の努力を尽くす私たち自身の決意を表明する。


(3)安倍総理の主張には法的な正当性はない

以上みてきたように、安倍総理の主張は日韓請求権協定によって個人の請求権は実態として消滅していないという、これまでの政府見解や我が国最高裁判例とも矛盾しており、法的な根拠はないといってよい。

元関西学院大学法科大学院教授の宮武嶺氏(弁護士)は、そのブログにおいて「そもそも、朝鮮半島の人を無理やり日本に連れてきて働かせたのに、働かせた日本企業が責任を取らないでいいだなんて主張の方が無理筋でしょう」「一人一人の国民と国は権利義務主体として別、法的に別人格ですから、国が他人である国民の請求権を放棄したりできないんですね(赤太文字強調:引用者)」と言っておられる。

まさに正論と言うべきである。この裁判で原告が求めたのは、未払い賃金や補償金そのものではない。不当な植民地支配と侵略戦争の遂行に直結した日本企業の反人道的な行為に対して、慰謝を請求しているのである。

韓国の側から見れば、安倍総理の発言は、この慰謝を求めた原告に対してされているものと受け取られているのである。このような強制徴用の被害者の訴えに対して「あり得ない」と言われれば、韓国国民が激怒するのは当然であろう。

しかも、ことは韓国の裁判所が条約、韓国国内法等に基づいて行った判断なのである。韓国政府に対して抗議してみたところでどうにかなるものではない。仮に韓国政府が日本政府の主張を受け入れたとしても、韓国の裁判所が韓国政府の判断に拘束されるわけがないのである。


(4)レーダ照射事件は、このような状況で発生した

レーダ照射問題は、このような対日感情が極度に悪化する中での事件なのだ。確かに、友好国の航空機に対して火器管制レーダを照射するというのは、やや非常識な行為ではある。しかし、そこまで対日感情を悪化させる原因を作り出したのは安倍総理と自民党の側なのである。

そして、本件についても、事態を日韓の関係悪化につながらないようになんとか収めようという意識は、安倍総理と自民党にはまったくみられない。日本の映像の公開にしても、時事通信によれば「(防衛)省は防衛当局間の関係を一層冷え込ませると慎重だったが、韓国にいら立ちを募らせる安倍晋三首相がトップダウンで押し切った」(※)とされる。

※ 時事通信社2018年12月28日付記事「渋る防衛省、安倍首相が押し切る=日韓対立泥沼化も―映像公開」による。

声高に相手の非を唱えて、事を大きくし、日韓の対立を煽っているのである。これでは、ネトウヨと同じレベルの発想で、子供の喧嘩と同じである。安倍総理は言いたいことを言って、憂さを晴らすとともに、国民の受けを狙ったのかもしれない。しかし、それでは我が国の真の国益は損なわれるのだ。

愚かな行為だというしかないであろう。これら一連の行為で明らかになったことは、安倍総理には国家のリーダとしての資質に欠けているということである。


3 徴用工問題にどのように対応するべきか

(1)冷静な対応をするべきだ

強制徴用について、中国との関係ではあるが、西松建設が被害者に謝罪し、和解金が支払われて和解した例がある。そもそもの問題の本質を明らかにし、植民地支配におけるかつての政府と企業が行った不当な行為の非を認めて冷静に対応すれば解決の糸口は見つかるのである。

先述した我が国の弁護士有志の声明には「日本政府は、新日鉄住金をはじめとする企業の任意かつ自発的な解決に向けての取り組みに対して、日韓請求権協定を持ち出してそれを抑制するのではなく、むしろ自らの責任をも自覚したうえで、真の解決に向けた取り組みを支援すべきである」としている。正論であろう。

個人の請求権はなくなっていないというこれまでの政府の立場に立った上で、かつての強制徴用の非を認めて、真摯に話し合うべきであろう。

なお、この問題について、日本共産党の志位委員長が「日本政府、日本の最高裁、韓国政府、韓国の大法院の4者とも被害者個人の請求権は認めているわけです。だからこの一致点を大事にしながら解決の方法を探るべきです。(略)ただ相手を非難するやり方は大変によくないと思っています」と言っておられる。まさにその通りで、安倍総理よりも野党の委員長の方が、はるかにまともなことを言っている。


(2)国際司法裁判所に訴えることは国辱ものである

安倍総理は、国際司法裁判所へ提訴すると言っているが、そんなことをすれば、日本がかつての侵略行為を正当化しようとしているという意識が国際的に広まるだろう。なぜこの総理にはこうも国際感覚が欠如しているのだろうか。

また、国際司法裁判所では請求権協定そのものの意味が議論されることとなる。韓国最高裁の言うように、国際的な犯罪行為についての請求権がこの範囲には含まれないという主張が認められる可能性は高い。最近では従軍慰安婦を巡り、日本の歴史認識について国際的に批判が高まっている状況を考慮した方がいいだろう。

事実、我が国でも多くの法律の専門家が、国際司法裁判所でも敗訴する可能性を主張している。

安倍総理のやり方では、国際的に日本に対する反感を持つ人々を増やして、我が国が孤立するだけである。これは、偏狭な愛国心を煽って、無謀な戦争に突入したかつての日本と共通するものがあると言えよう。


(3)自民党政権の暴走を止めよう

安倍総理は、これまでの経緯を見ると、自らを支持してくれるイエスマンの言うことしか聞くことができないのではないだろうか。そして、危険なことに、総理の周りにいる無責任な“識者”や右寄りマスコミが、安倍総理の暴走を煽っているのである。このままネトウヨとさして変わらない思考をする安倍総理の暴走を止めなければ、我が国の国益は今後も損なわれるばかりである。

今回のことでも、隣接する友好国をわざわざ敵の側に追いやってしまったのだ。韓国国民の反日感情に火をつけ、日韓の友好関係を構築していこうとしていた韓国政府を、反日にならざるを得ない状況に追いやったのである。朝鮮労働党委員長の金正恩氏が、最近の日韓の状況見て大喜びしていることだけは間違いないだろう。

こうなれば、正しい答えは一つである。我が国の国益を守るためには国のリーダとしての資質に欠ける無能な安倍総理を辞めさせるしかない。次の総選挙で、野党が結集して、与党を少なくとも3分の2未満とし、できれば半数以下にすること。これしかない。