- 1 加藤官房長官の記者会見
- 2 国際社会におけるミャンマーへの圧力
- (1)米国の軍事政権への制裁
- (2)EUによる軍事政権への制裁
- 3 欧米に比較して日本政府の感性の低さが目立つ
- 4 ミャンマーの軍事政権への圧力を強めよう
1 加藤官房長官の記者会見
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筆者:平児
朝日新聞(※)が報じたところによると、加藤勝信官房長官は記者会見でミャンマーの軍事弾圧を非難はしたものの「経済協力を含む今後の対応は、事態の沈静化や民主的な体制の回復を見て、どのような対応が効果的か具体的に検討し、総合的に進めていきたい
」として、経済制裁などの具体的な措置は見合わせるとした。
※ 朝日新聞2021年3月29日「「強く非難する」加藤氏、ミャンマー国軍のデモ弾圧で」
時事通信(※)も伝えているが、日本政府は実質的なミャンマーへの圧力をまったくと言ってよいほどかけていないのである。
※ 時事通信2021年3月30日「政府、対ミャンマー制裁なお慎重 米欧と隔たり、対応苦慮続く」
また、菅総理も自分の言葉でミャンマーを批判することをほとんどしていない。日本政府の公式見解は、加藤官房長官が記者会見で記者に尋ねられて、軍事政権を批判するレベルにとどまっている。
Today (Mar 30) also saw the funeral of Khine Zar Thwe, a 26-year-old Irrawaddy Bank employee who was shot during a violent crackdown on protesters in South Dagon, Yangon, on Mar 28. She would have turned 26 today. #WhatsHappeningInMyanmar pic.twitter.com/JDRkMOo6hJ
— Myanmar Now (@Myanmar_Now_Eng) March 30, 2021
2 国際社会におけるミャンマーへの圧力
(1)米国の軍事政権への制裁
米国のバイデン大統領は、ミャンマー軍による人権弾圧を、自分自身の声で繰り返し批判している(※)。
※ 例えば、FNNプライムオンラインの動画「米・バイデン大統領 ミャンマー軍 弾圧『言語道断』」、毎日新聞2021年2月11日記事「バイデン米大統領、ミャンマー国軍幹部への制裁措置発表」など
また、実質的な制裁も加えて軍事政権に圧力をかけている。報道から、いくつかを挙げてみると、東京新聞3月30日「米、ミャンマーに追加の経済制裁 「市民への暴力を強く非難」」、ロイター3月24日「米国、ミャンマー国軍系企業に新たな制裁計画=関係筋」、NHK3月5日「米 ミャンマーに輸出規制の追加制裁『加害者たちに責任を』」など、軍事政権の行動がエスカレートするたびに実質的な制裁を行っている。
(2)EUによる軍事政権への制裁
軍事政権による人権抑圧への制裁はEUにおいても同様である。
報道等から、EUによる軍事政権批判をみてみよう。ジェトロ2月24日「EU理事会、ミャンマー情勢を非難する「結論」採択、制裁も視野に」、ロイター3月22日「米EU、ミャンマーのクーデター巡り制裁 独外相「看過できず」」、時事通信2月22日「EU、ミャンマー制裁の用意 クーデターの責任者対象」など、反応は早かった。
3 欧米に比較して日本政府の感性の低さが目立つ
欧米の指導者たちが、個人の言葉でミャンマーの人権抑圧を批判し、実質的な制裁を加えているのに対し、日本政府の感性の低さはあきれるばかりだ。産経新聞3月29日「『恥辱の日』国際社会の批判相次ぐ ミャンマー国軍は無視」は中国やロシアなど国軍批判を控える国は多く、一枚岩には程遠い国際社会の対応にミャンマー人からはいらだちの声が上がっている
としている。産経新聞らしく、日本政府がその中に入っていることには言及していないが、日本政府はまさに中ロと同じレベルなのである(※)。
※ COURRiER 2021年3月21日記事「対中を意識するあまり、中国と似た外交をミャンマーでする日本」など
安倍前政権の熱心な支持者である山田敏弘氏がクーデターで世界から非難を浴びるミャンマーを見捨てずに、つながりを強化した方がいい。それが日本の利益につながることになる
などと、信じがたい発言をしている(※)。人権よりも企業の利益を優先させるという発言であるが、これが菅政権の本音だとしたら、我が国は国際社会から人権後進国との烙印を押されるであろう。
※ 山田敏弘「 世界から非難されるミャンマー 日本企業は“ビジネスの危機”を乗り越えられるのか」(ITmediaビジネス 2021年2月11日記事)
また、朝日新聞(※)によると、日本の官民が進めてきた都市開発事業で、土地の賃貸料がミャンマーの国防省に支払われているとされている。これでは、日本の官民がミャンマー軍による市民虐殺を支援しているようなものである。
※ 朝日新聞2021年6月4日「日本の開発、ミャンマー国軍の資金に? 中止求める声も」
このような意識・行動は、かえって国際社会の反発を受け、日本企業にとって活動がしにくくなるだけだということを指摘しておきたい。
4 ミャンマーの軍事政権への圧力を強めよう
前の記事「ミャンマー軍による弾圧」でもお伝えしたが、ミャンマーの軍事政権の人権抑圧の酷さは常軌を逸している。SNSなどで批判の声を上げるとともに、日本政府へのミャンマー制裁への声を上げていくことを訴えたい。
現地からの声に耳を澄ませ、日本人とミャンマー人で書き上げた要請文です。賛同いただける方には、オンライン署名をお願いいたします。「ミャンマーの人々の命と自由を守るために、連帯の意思を示してください!ご協力をお願いいたします」 https://t.co/LzVHDQAMDp @change_jpより #SaveMyammar
— ミャンマーの人々を応援する有志の会 (@JVsMyanmar) February 27, 2021