- 1 杉田議員問題の概要を知るために
- 2 ユーチューブの動画で学ぶ杉田議員のLGBT差別事件
- (1)杉田議員が笑いながらLGBTの子供の自殺率が高いと発言
- (2)米国のオバマ前大統領はどう言ったか
- (3)新潮45で杉田議員は何を言ったか
- (4)差別の問題に右も左もない
- 3 差別をなくすためのユーチューブの動画など
- (1)若いユーチューバたちの作成した動画
- (2)ニュージーランドのモーリス議員のスピーチ
- (3)参考となる映画
- 4 最後に
1 杉田議員問題の概要を知るために
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筆者:柳川
杉田議員によるLGBTへの差別事件を知った後、LGBTについて調べてみたのだが、知れば知るほど、杉田議員への怒りが高じてくる。調べた中には、いくつかユーチューブの動画も含まれている。大変参考になるものもあるので、本稿では、それの一部を紹介していきたい。ご関心があれば、一部だけでもご覧になっていただければと思う。
なお、一部の動画について、動画中の発言を書き起こしているが、いずれも抜き書き(抜粋)であり、すべてを再現したものではないことを明記しておきたい。改行している部分には、発言が省略されていることをお断りしておく。
2 ユーチューブの動画で学ぶ杉田議員のLGBT差別事件
(1)杉田議員が笑いながらLGBTの子供の自殺率が高いと発言
杉田議員は、新潮45に寄稿するかなり前の平成27年7月に公開された動画で、LGBT(※1)の子供の自殺率がそうでない子供の自殺率よりも6倍高いと楽しそうに笑いながら説明している(※2)。この動画は、ユーチューブで今も確認することが可能である(※3)。
※1 他でも述べたが、私はLGBT(Lesbian、Gay、Bisexual、Transgenderの略)という用語は必ずしも正確ではなく、SOGI(Sexual Orientation and Gender Identity=ソジ)というべきだと思っている。しかし、LGBTの方が一般的なので本稿でもそれで統一する。
※2 おそらく根拠としているのは、日高庸晴氏他の調査ではないかと思う。だとすれば、調査対象は"性経験のある15歳から24歳の人"であり、異性愛者と同性愛者で自殺未遂率に6倍の差があるというものである。調査対象は、子供とばかりは言えず、自殺率と自殺未遂率の違いがあるなど、杉田議員の発言と調査結果は趣旨がやや異なる。しかし、同性愛が自殺のリスクであるということについては、欧米では研究が進んでおり、専門家の見解はほぼ一致している。
※3 これは、Swingin’Osushi氏がアップした「"Unproductive Homosexuals" Speech by Japanese House Member Mio Sugita (杉田水脈)」など、いくつかの動画で確認できる。正直なところ、この動画は、見ているとあまりにも気分が悪くなるので、これはリンクを張ることはしない。
【杉田議員のユーチューブでの発言】
こないだなんか、テレビの討論番組から電話がかかってきまして、このLGBTの知識を学校教育で教えるべきかどうかっていうことって、いうことに対しての意見を下さいっていう。私は当然そんなものは必要ありませんって言ったら、あの、なんて言われたかっていうとですね、その、同性愛の子供は普通に正常に恋愛できる子供に比べて、自殺率が6倍高いんだと、それでもあなたは必要ないんですかみたいなことを言われまして(ここで杉田議員は楽しそうに笑った)、あのー、私はそれでもあの優先順位は低い・・・
だが、なぜLGBTの子供の自殺率が高いのだろうか。それは、周囲の大人たちや子供たちのLGBTへの理解がないことなどにより、本人が自分一人だけが"異常"なのではないかと悩むことなどが背景となっているのである。さらには、いじめにあって自殺するケースもあるのだ。
これらの自殺は、学校において適切な教育を行うことにより、救えるケースもあると考えられる。実際に、行政や自治体の自殺対策、また個別の企業や学校などにおける取組が行われ、すでに実際に対応が進んでいるケースもある。
にもかかわらず、杉田議員は、このような対策を学校が行うこと(子供たちにLGBTについて理解を深めるための教育をすることなど)は、優先順位が低いという。
そればかりか、同議員のブログでは、不要だと明確に言い切っているのである。そのような教育をするためには税金を投ずることが必要となり、それはLGBTに対して特権を与えることになるというのだ。
【杉田議員の2015年3月27日のブログより】
日本では基本的人権が保障されています。性別や年齢に関係ありません。LGBTの人たちにも当然保障されています。
この上で、「女性の権利を」とか「LGBTの人たちの権利が」とかというのは、それぞれ、「女性の特権」「LGBTの特権」を認めろ!という主張になります。
普通の生活が保障されてもできない人の為の支援策は必要です。(障害者の方や病気にの(原文のママ=引用者)方の支援策など)それ以外は不要です。
いかにも新自由主義者の言いそうなことではあるが、言葉を変えればこれは、LGBTの子供たちを死に追いやることを見過ごせと言っているのである。これはLGBTだけに向けられた言葉ではない。あるマイノリティグループが自殺のハイリスクグループであったとしても、そのグループに対して自殺対策などの支援を行うのは、彼らに対して「特権」を認めることだと言っているのである。
(2)米国のオバマ前大統領はどう言ったか
LGBTの子供が自殺する事件は、日本だけではない。世界の様々な場所で起きている。米国でも、いじめによってLGBTの子供が自殺する事件が起きている(※)。
※ 参考となるユーチューブの動画を2本紹介しよう。ジョエル・バーンズ議員による It Gets Better(ゲイ レズビアン LGBT)とGlee/グリー ゲイのカート君のIt Gets Better (クリス・コルファー)の2つだ。最初のものは13分近いが、後者は1分足らずだ。ぜひ、ご覧になっていただきたい。
これについて、米国の政治家はどのように考えているだろうか。その一例として、オバマ大統領(当時)がこのことを知ったときに、国民に対してどのように語ったかを動画(※)でみてみよう。
※ 「オバマ大統領によるイット・ゲッツ・ベター It Gets Better ゲイ レズビアン」という動画だ。
オバマ前大統領は明確にこう述べている。
【LGBTの子供へのいじめ自殺についてのオバマ前大統領の言葉】
ゲイだという理由でイジメられあざけられていた若い人たちが自殺して死んでしまったというニュースに私もショックを受け悲しい思いをしています。
このようなことはこの国では起こってはいけないことです。
私たちは学校という場所をすべての子供にとって安全な場所にしなければいけません。
ここには自分がいるべきではないと感じながら大人へと成長していくのがどのようなものかを私は知っています。それは厳しいことです。
もうひとつ知っておいて欲しいことがあります。
あなたが人とは違うということがあなたの誇りとなり強みになるのだとだんだんと分かることでしょう。
あなたは差別に対抗していくことができる人になれるでしょう。
杉田議員といかに違うことだろうか。これこそが政治家の言うべき言葉である。杉田議員のように差別する側に立つのか、それとも差別される側に立てるのかの違いである。もちろん、私はオバマ大統領の行動を全面的に支持しているわけではない。だが、米国の大統領の中では、カーター大統領と並んで、優れた側の人物であると考えている。
また、オバマ大統領以外でも、LGBTの自殺防止のために税金を使うべきではないなどと言った米国の国会議員がいるなどという話を私は聞いたことがない。
マイノリティの子供の自殺を防止するというのは、世界の多くの国においては、右とか左とかの政治的信念とは別な話だ。子供の生命を守るという信念に、右と左で違いがあってはならないのである。
世界的にみても、杉田議員の主張はきわめて異様なものなのである。
(3)新潮45で杉田議員は何を言ったか
ア 杉田議員の発言の本質
そして、新潮45で杉田議員が恐るべきことを言ったのは、もう皆さんもご存じだろう。LGBTは、この世に存在しなくてよいと、日本に居て欲しくないと言ったのだ。
【杉田議員の新潮45の記事より】
最近はLGBTに加えて、Qとか、I(略)とか、P(略)とか、もうわけが分かりません。なぜ、男と女、二つの性だけではいけないのでしょう。
『常識』や『普通であること』を見失っていく社会は、「秩序」がなくなり、いずれ崩壊していくことにもなりかねません。私は日本をそうした社会にしたくありません。
これは、杉田議員を擁護する一部の識者が言うような「言葉尻」の問題ではない。LGBTの存在を「常識」に反する「普通であること」ではないと決めつけて、存在さえ認めようとしていないのは、杉田議員が書いた新潮45の文章の基本思想なのである。
杉田議員のこの寄稿を読めば、LGBTを差別している子供たちは、自分たちは正しいことをしていると感じるだろう。まさに、LGBTの子供たちへのいじめをけしかけているようなものだ。この杉田議員の発言によってLGBTの子供たちは、ますます追い詰められてゆくだろう。
イ 杉田議員の言葉は子供たちを死に追いやる
今も、日本の各地、いや世界の各地で、性的指向や性自認のために苦しみ、傷ついている人びとがいる。その人たちは、けっして大人だけではない。多くの子供たちも苦しんでいる。今も、いじめられて死を考えている子供たちもいるだろう(※)。杉田議員の言葉は、そのような子供たちを死に追いやろうとしているのである。
※ HumanRightWatchJの「日本:いじめに遭うLGBTの子どもたち 保護されず」が参考となる。
7月27日の自民党本部前の抗議活動の様子を、毎日新聞がユーチューブに動画(※)をアップしている。その中で、富山大学の林准教授は、次のようにスピーチしておられる。
※ 毎日新聞ニュースによる「LGBT:「杉田議員辞職を」自民党本部前で4000人抗議」に動画があったが、残念ながら削除された。
【7月27日の自民党本部前の抗議活動での富山大学林准教授の言葉】
今回、私たちは傷つきました。悲しみました。差別の言葉がなんでダメなのか、それはそのとき耳に刺さるだけじゃないんです。その言葉はその言葉に触れた人の心の中にずっと残るんです。『あなたは必要とされてない』というその一言、それが寝ても覚めても繰り返されてしまうんです。
この動画には、林准教授の後で、このスピーチを聞いている若者=鈴木南十星(なとせ)さん=が必死に泣くのを堪えようとしておられるのが映っている。差別され、抑圧された側にいたことがある者であれば、そのような経験を持つ者であれば、この涙の意味は分かるに違いない。
そして、鈴木南十星さんは、8月5日の渋谷駅頭の抗議活動で次のようにスピーチをしておられる(※)。
※ やや長い動画だが、Makabe Takashi氏がアップした「#0805PRIDEDAY #0805杉田水脈議員の差別発言に抗議する渋谷ハチ公前街宣 2018年8月5日」で最初にスピーチしておられる。この動画は埋め込み再生が禁止されているので、直接リンク先から閲覧して欲しい。
【8月5日の渋谷駅頭での鈴木南十星さんの言葉】
この前の自民党の抗議でスピーチした後に、私にたくさんメッセージが寄せられました。
中には自分は高校生で、自分の学校では差別、同性愛者は気持ち悪いだとか、同じような世代の子たちが毎日、それを教室で言っている。でも南十星さんのスピーチを聞いて、私はまだ生きていていいんだって思えたってコメントをくれた高校生がいました。日本って、まだそんな状況なんです。
LGBT、LGBTって言葉だけ流行ってるけど、差別はまだある。私たちは闘わないといけない。杉田水脈議員、谷川とむ議員、そしてその彼らの発言を容認している自民党のやり方、絶対に許しません。
ここでも指摘されているように、LGBTに対する差別と偏見は、今も我が国には根強く存在しているのである。
同性婚人権救済弁護団の「同性婚だれもが自由に結婚する権利」(明石書店2016年)(※)に、9歳のときに自殺未遂をしたという方の話が載っている。その方は、学校でLGBTについて教えられていたら、状況は違っていただろうと述べておられる。
※ 私は、この本が明石書店から出版されたことは、大いに意味があることだと思っている。明石書店は、カトリック系の出版社だ。LGBTは宗教の枠を超えて、理解することが可能なのである。
繰り返すが、杉田議員が、学校でLGBTについて教育を行うべきではないと言っているのは、まさに子供たちを死に追いやるものなのだ。このように言うと、読者の方は、それは極端な主張だと思えるかもしれない。だが、そうではない。LGBTの子供たちの自殺未遂率(※)は、冒頭で紹介した動画の中で杉田議員が楽しそうに笑いながら説明しているように、他の子供よりも6倍も高いというデータもあるのだ。
※ 先述したように杉田議員は "自殺率"と言っている。たんなる誤解なのかもしれないが、自殺率と自殺未遂率の区別すらついていないのであれば、国会議員として不勉強だと言うべきであろう。
そして、それを救うのは大人の義務である。LGBTのみならず、すべての子供たちに対して、自らの価値、自らの尊厳を教えるのは大人たちの責任なのだ。だが、残念なことに、政権与党の自民党も、杉田議員も、安倍総理もそう考えては、おられないようだ。
(4)差別の問題に右も左もない
LGBTへの差別をなくそうというと、左翼だという批判が投げつけられることがある。結構だ。差別をなくすのが左翼で、差別を助長するのが保守だというなら、私は喜んで左翼になろう。
だが、差別をなくそうとしているのは、左翼だけではない。さきほどオバマ前大統領の例を見た。もちろん、オバマ大統領が左翼のわけはあるまい。
次に、左右それぞれの立場の方が差別に反対している動画を紹介しよう。
ア 右側の例
(ア)米空軍士官学校
LGBTについてではないが、まず、右側から差別に対して怒りを挙げた例を示そう。米空軍士官学校の予備校で、誰かが掲示板に黒人に対する差別的な書き込みをしたときのことだ。士官学校長のシルベリア中将が生徒の前で行ったスピーチがユーチューブにアップされている(※)。この中で彼はこう述べている。
※ BBCがアップしている「『他人を尊重できないなら出ていけ』米空軍士官学校の校長」だ。なお、この掲示板事件は、黒人兵の自作自演だったとの指摘があることを付記しておく。
【士官学校長のシルベリア中将の言葉】
きちんとこういう問題について話し合うべきだ。
我々が様々な境遇から国内各地からこうして集まり、あらゆる人種、あらゆる背景、あらゆる性別や生まれ育ちの人間がこうして集まった。その多様性の力があればこそ我々はその分だけ強くなる。
もし誰かの尊厳を尊重し、敬意と共に接することができないなら出ていきなさい。
シルベリア中将は、自らの組織は多様性があるからこそ強くなると述べている。そして、誰かの尊厳を尊重し、敬意と共に接することができないなら出ていけと述べている。その考え方は明確で誤解の余地はない。
この考え方は、我々の社会についても当てはめることが可能だろう。我々の社会は、多様性があるからこそ豊かに発展してゆけるのである。そもそも国民の数パーセントを占めるLGBTの方が、生きにくさを感じながら生きているとすれば、LGBTの方はその能力を十分に発揮できるようにならないことは明らかである。
そのような状態は、我々の社会の活力を削ぐのである。その意味で、杉田議員の発言は、我が国に対して害をなすものだといえよう。
(イ)自民党総裁選候補の石破茂議員
自民党内でも自民党総裁選候補の石破議員が、杉田議員の発言を強く批判しておられる。残念ながら現在の自民党と安倍総理(当時)は、杉田議員の発言を容認している(※)。とはいえ、我が国の保守派の中においても、LGBTの人権の問題について正論を言える人物がまだ残っているのである。
※ 表現の問題はあったと認めているが、内容については容認している。
石破氏の発言について動画を探してみたのだが、見つけることができなかった。そのため、文章による紹介だけにとどめておく。
イ 左側の例
次に左側の例を紹介しよう。我が国の左の代表と言えば日本共産党であろう。7月27日の杉田議員への抗議のための、自民党本部前での抗議行動における、共産党の吉良よし子議員の言葉を紹介しよう。これは日本共産党がユーチューブに動画(※)をアップしている。この中で吉良議員はこう述べておられる。
※ 日本共産党の「生産性で人の価値決める政治絶対許さない」
【7月27日の自民党本部前の抗議活動での吉良よし子議員の言葉】
LGBTに対して、子供を産まないから、生産性がないから支援に値しない。ああいう発言は明らかな差別、偏見に満ちた発言だと思います。
LGBTだけじゃなく、やはりこの世に生きるすべての人は、私が何者か自分を自分として認めて欲しい、そういう苦しみや悩みにはいつも立ち向かっていると思う、とりわけLGBTの場合、その苦しみに直面せざるを得ない状況がある。私に手紙をくれたゲイの方も中学生のときに、自分の性的指向を自覚して、こんな性的指向を持っているのは自分だけだと思って孤独感に苦しんだ。今なお政治に性的指向について一人で思い悩んでいる人がいるかもしれない。そんなときに生産性などという言葉で支援が必要ないなどという傷口に塩を塗り込むような言葉、絶対に言ってはならないんじゃないですか。
あなたがあなたであることだけで、それが一番の良いことなんだ、そこに尊厳があるんだ、価値があるんだ、そんな当たり前のことを言えないような人がなぜ政治家と名乗れるのか。
まさに、正論としか言いようがない。
残念なことに、我が国の保守を自認する政治家には、このようなことが言える方は、ほとんどおられないようである。他人の苦しみを想像する能力が欠如しているからだとしか言いようがない。
3 差別をなくすためのユーチューブの動画など
(1)若いユーチューバたちの作成した動画
また、若いユーチューバたちが、差別をなくそうとしてさまざまな動画をアップしている。このことは我が国の未来にとって、期待してよい動きである。それらの中からいくつか簡単に紹介しておきたい。
最初に、「【性的マイノリティ?】現役高校生が「LGBT」について話し合う。」を紹介しよう。現役の高校生2人が、LGBTについての啓発を行っている。2人で話し合っている様子が動画に写されているが、なかなかよくできている。
また、肩ひじ張らないものとして「【LGBT】原宿で元女子ですとカミングアウトしてみた。」も、LGBTへの理解を深めるための良質の動画である。FTMとストレートの若者数人が、街角で、若い女性にLGBTに関するインタビューを行い、その後で自分たちの中のLGBTが誰かを当てさせる構成となっている。
見ていてもなかなか面白い。公的な機関の作った啓発ビデオよりも、このようなものの方が、当事者が作成したということもあり、効果があるかもしれない。
「【LGBT】タイで元女子とカミングアウトしたら日本と反応が違いすぎた」と比較してみていただきたい。
現在は非公開となっているが、「生産性があるかないかなんて #誰にも決められない」は、同性愛について偏見をなくすための活動をしている若者のグループ"性性堂堂"の作成した動画である。1分に満たない短いものだが、とても優れた動画だと思う。たぶんSNS用に作られたものだと思う。
また、これも非公開だが「【#metoo 】過去のセクハラを告発します。【負けないよ】」も参考になる。
心無い一部のマスコミがLGBTの方をどのように苦しめているかについて、「【LGBTs】セクマイをネタにする芸人さんが大嫌い。」が参考になる。LGBT当事者の女性による動画である。同じ方のアップされた「性同一性障害を公表する覚悟と葛藤。」も参考になる。
また、これも現在は非公開だが「杉田議員の差別発言を野放しにする自民党【政治バーチャルYoutuber みーちゃん】」は、シリーズものとなっているもののひとつだが、若い方たちに政治に興味を持っていただくという観点から、テーマの取り上げ方や説明の方法、内容などきわめて優れたものである。
画面の作りを見て、不真面目なものだと思えるかもしれないが、なかなかどうして、このシリーズは、数分程度の長さで複雑な内容についてきわめて分かりやすく説明している。お勧めできる動画だと思う。
(2)ニュージーランドのモーリス議員のスピーチ
最後に、以前も取り上げたが、「同性婚を認める法案の賞賛されたスピーチ」を紹介しよう。2013年にニュージーランドで同性婚を認める法律ができたとき、モーリス・ウィリアムソン議員が議会でしたスピーチを日本語字幕付きで紹介している。
【ニュージーランドのモーリス・ウィリアムソン議員の言葉】
この法案で我々がやろうとしていることは、愛し合う二人に、結婚という手段を認める。それだけです。これが全てです。
何か問題でしょうか。お金もかからないのに。なぜこの法案に反対なさるのかがわからない。
締めくくりに、それでも法案を懸念なさる方々へ聖書からの引用を。
申命記です。
懼るるなかれ。
全体で4分程度のものである。これは、一部だけを文字で読んでもニュアンスは分からないと思う。4分8秒の長さであるが、ぜひ全体をご覧になっていただきたい。
私にも、安倍総理と自民党が、同性婚に反対する理由がまったく理解できない。しかも自民党は地方自治体の同性パートナー照明書の制度などにまで反対しているのだ。
パートナーシップに関連して、米国のアイオワ州で同性愛者たちのパートナーシップ制度を廃止するという提案されたとき、この提案に反対するためのスピーチを紹介しておこう。「レズビアンのカップルに育てられたザック・ウォルスのスピーチ「家族」」だ。
【ザック・ウォルス氏の言葉】
これから2時間、両親がゲイであることが子供にどれだけ有害であるかが多数証言されると思います。しかし私が生きてきたこの19年間これまで一度たりとも私がゲイのカップルに育てられたことを感づかれて、そうなのかと聞かれたことはありません。
なぜだか分かりますか?
それは私の両親の性的な指向は私の人格に全く影響がないからです。
どうもありがとうございました。
彼が19歳の若さで、州議会においてここまでしっかりと発言できることが、ゲイのカップルに育てられることの意味を証明している。
なお、やや長いが「【生中継】パートナーシップ制度を全国に広げよう!~夏の陣成果報告会~ 同性カップルをパートナーとして公的に認めるパートナーシップ制度等に関する陳情・請願書などの成果報告会」も参考となる。
さらに行政が作成した人権啓発動画として「人権啓発ビデオ 「あなたが あなたらしく生きるために 性的マイノリティと人権」を挙げておこう。やや白々しさを感じないでもないが。
(3)参考となる映画
最後にLGBTを知る上で参考となる映画を挙げておきたい。LGBTを扱った映画は意外に多く、私もいくつか観てはいるが、しかし、残念ながら私が観た中には、LGBTの問題を知るためにお勧めできるものはそう多くはない。
お勧めできるものとしては、記録映画では「ハーヴェイ・ミルク」(原題:The Times of HARVEY MILK)が挙げられる。ゲイであることをカミングアウトしてニューヨーク市の市政執行委員に当選し、後に暗殺されたハーヴェイ・ミルクの記録映画である。なお、ショーン・ペンがハーヴェイ・ミルクを演じた「ミルク」という伝記映画も存在しているが、これは、私は観ていない。
また、創作映画としては2014年の英国映画「パレードへようこそ」がお勧めである。イギリスのLGBTの活動家と炭鉱労働者の間の、連帯と理解を描いている。秀作である。最後のシーンで、パレードに炭鉱労働者が参加するシーンは素晴らしい。
日本映画ではあまりお勧めできるものは見当たらない。しかし、「メゾン・ド・ヒミコ」はお勧めできる。ゲイの老人ホームを舞台に、親と娘の対立と和解を、ゲイの青年とストレートの女性の関係をからませて描いている。LGBTの問題を知る上では、お勧めできるものだと思う。
なお、この映画は、性的指向、性自認、性表現の区別がついていないという批判を受けることもある。確かに映画の中でMtFのトランスジェンダーもゲイと呼ばれている。これは正しくない。MtFは女性であり、ゲイということはあり得ない。しかし、必ずしも区別をつけていないわけではないようで、トランスジェンダーが女装するシーンはあるが、ゲイが女装したりはしていない。
なお、高校におけるLGBTを描いた「カランコエの花」が、現在、上映中であり、これもよい映画らしいが、かなり限定的な上映しか行っておらず私も観ていない。
また、テレビドラマだが「ファースト・デイ わたしはハナ!」もお勧めできる。
4 最後に
どうだったろうか。私が紹介した動画をいくつかご覧になった方は、どのように感じられただろうか。ことによると、とくに感情をゆさぶられたりはしなかったかもしれない。
だが、白状してしまうが、林准教授のスピーチや、鈴木南十星さんのスピーチ、ザック・ウォルス氏のスピーチなど多くの動画を観たとき、私は涙が流れることを止めることはできなかった。
私もまた、子供の頃、多くの大人たちから聞かされ続けてきた。母子家庭の子供たちはどこか問題がある、片親の子供はなにかしら欠陥があると。そのときの、複雑な感情=屈辱感やくやしさが、数十年を経た今でも思いだされるからだ。
その言葉は、家族の大切さを教える授業の中で、なにげなく教師から発せられることもある。そのようなときには、何人かのクラスメイトがこちらを見て意味ありげな表情することもある。
また、別なときには、教師たちの会話の中で、なにげなく話されることもある。彼らは、自分たちの教え子の中に母子家庭の子供がいるということを忘れているのか、知っていても抽象的な話だから子供を傷つけることはないと思っているのか。
だが、言葉は悪意がなくとも子供たちを傷つけるのだ。とはいえ、私たち母子家庭の子供は、母子家庭であることを他人に話すことも、自分に誇りを持つこともできる。しかし、LGBTの子供たちは私たちよりも、はるかに辛い思いをしているのだ。
今も、泣きながらキーボードを打っている。たぶん、この気持ちは理解してはいただけないだろう。そのことはいい。理解していただく必要など全くないし、また、して欲しいとも思わない。
だが、これから申し上げることはぜひとも理解して頂きたい。
【最後に】
LGBTへの差別発言を放置しておけば、次は、母子家庭・父子家庭の子供たち、障がい者の子供たちが狙われるだろう。そして、その次はあなたたち自身が狙われることになるのだ。
どうか、これはLGBTのことだから自分には関係がないなどとは思わないでいただきたい。人は、誰しも、自分がマイノリティになることはあり得るのだ。また、最後には、一部のエリート以外の、多数派の人びとが狙われることになる。
我が国には、優生保護法による強制避妊という、暗い恥ずべき過去がある。杉田議員の言葉と思想は、まさにそこにつながっている。ある人々は存在しなくてよいという思想。そこに、明白な共通点があるのだ。そして、この思想が最後にもたらすもの。それは褐色のペスト、すなわちナチズムである。
なぜ、安倍総理(当時)はこうも杉田議員を大切にしているのだろうか。
少なくとも、私には、杉田議員とそれを容認している現在の自民党を許すことはできそうにない。彼らの差別の言葉は、直接のターゲットは違っていても、私自身にも向けられているからだ。