最高裁が同性者を犯給法の救済対象と判断


LGBTQ のイメージ

※ イメージ図(©photoAC)

最高裁は、犯罪被害者等給付金訴訟で、同性パートナーを「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」であると判断し、名古屋高裁判決を破棄し差戻しました(※)

※ 差戻し審は、破棄又は取消の理由となった上級審の判断に拘束されますので、この判断は差戻し審でも維持されることとなります。

この判断は、2020年の名古屋地裁判決、2022年の名古屋高裁判決がともに同性パートナーを「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」と認めなかったことをくつがえすもので、まさに画期的なものと言えます。

同性間でも異性者の内縁関係と同様な権利が成立するかどうかについては、これまでも下級審判例では認められていました。2019年の宇都宮地裁判決が、同性カップル間の不貞行為をめぐる争いでこれを認める判断をし、2020年の東京高裁判決もこれを維持しています。

今回の最高裁判決は、これを認めたものです。今後、事実上婚姻関係にあったものを異性者の婚姻と同様に扱っている制度において、同様な判断がされる可能性は高いと思われます。労災保険においても、遺族年金は異性者の事実婚であっても支払われてきましたが、同性パートナーにはこれが認められていませんでした。厚生労働省の今後の判断が期待されます。

この判断は、今後、様ざまな分野に影響を与えるものと思われます。その意義について解説します。




1 最高裁判所が同性パートナーを犯給法の救済対象と判断

執筆日時:

筆者:平児

(1)訴訟の経緯

ア 同性パートナーによる遺族給付金請求の請求

テミス(正義の女神)像

※ イメージ図(©photoAC)

最高裁は、犯罪被害者等給付金訴訟の判決で、同性パートナーを「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」であると判断し、名古屋高裁判決を破棄し差戻した。

この訴訟は、同性のパートナーを殺害された原告が、「犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律」(以下「犯給法」と略す。)に基づき遺族給付金の請求を行ったところ、愛知県公安委員会が原告と被害者が同性(男性同士)であることを理由に給付を認めなかったため、その取り消しを求めるものである。

【犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律】

(犯罪被害者等給付金の種類等)

第4条 犯罪被害者等給付金は、次の各号に掲げるとおりとし、それぞれ当該各号に定める者に対して、一時金として支給する。

 遺族給付金 犯罪行為により死亡した者の第一順位遺族(次条第三項及び第四項の規定による第一順位の遺族をいう。)

二及び三 (略)

(遺族の範囲及び順位)

第5条 遺族給付金の支給を受けることができる遺族は、犯罪被害者の死亡の時において、次の各号のいずれかに該当する者とする。

 犯罪被害者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)

二及び三 (略)

2~4 (略)

原告と被害者は、20年以上生活をともにしており、共に老親の介護をするなど夫婦同様の生活を送ってきた。しかし2016年(平成28年)12月12日に被害者が殺害されたため、愛知県公安委員会に原告が遺族給付金の申請をした。


イ 愛知県公安委員会が請求を認めない採決

愛知県公安委員会は、2017年(平成29年)12月22日付けで、本件申請につき、遺族給付金を支給しない旨の裁定をした。その理由は次のようなものである。

  • 現行法上、婚姻は異性間で行われることが前提となっているものと解され、犯給法にこれと異なる趣旨の規定は存しない。
  • そうすると「事実上婚姻関係と同様の事情」として位置付けられる内縁関係も、当然に異性間の関係であることが前提となる。
  • 従って、原告と被害者は「事実上婚姻関係と同様の事情」として位置付けられる内縁関係には該当しないので遺族給付金を支給しない。

すなわち、原告と被害者が同性であるという理由だけで、「事実上婚姻関係と同様の事情」とはいえないとして不支給決定をしたのである。


ウ 名古屋地方裁判所が請求を棄却

原告は、2018年(平成30年)3月16日に、国家公安委員会に対して審査請求をしたが、裁決がされないため、名古屋地方裁判所に対して愛知県公安委員会の裁決の取消しを求める訴えを起こした。

これに対して、名古屋地判2020年(令和2年)6月4日は、次のように述べて原告の訴えを退けた。

  • 同性の犯罪被害者と共同生活関係にあった者が犯給法5条1項1号の「婚姻の届出をしていないが,事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に該当するためには,同性間の共同生活関係が婚姻関係と同視し得るものであるとの社会通念が形成されていることを要するというべきである。
  • 本件処分当時の我が国において同性間の共同生活関係が婚姻関係と同視し得るものであるとの社会通念が形成されていたとはいえず、本件処分当時においては、同性の犯罪被害者と共同生活関係にある者が、個別具体的な事情にかかわらず、「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」(犯給法5条1項1号)に当たると認めることはできないというべきである。

すなわち「我が国において同性間の共同生活関係が婚姻関係と同視し得るものであるとの社会通念が形成されていたとはいえ(ない)」として、原告の請求を棄却したのである。


エ 名古屋高裁も名古屋地裁の判断を維持

原告は、名古屋高等裁判所に対して控訴した。名古屋高判2022年(令和4年)8月26日添付文書)も、次のように述べて名古屋地裁判決を維持した。

  • 犯給法5条1項1号においても、「配偶者」、「婚姻の届出」、「婚姻関係」という民法上の婚姻に関する概念により定められていることからすると、民法上は法律婚主義が採用されていることから(739条1項)、同号は、一次的には死亡した犯罪被害者と法律上の婚姻関係にあった配偶者を遺族給付金の受給権者としつつ、死亡した犯罪被害者との間において法律上の婚姻関係と同視し得る関係を有しながら婚姻の届出がない者も受給権者とするものであると解される。
  • 同号括弧書きの「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。」との定めも、犯給法に特段の定めがないから、婚姻の届出ができる関係であることが前提となっていると解するのが自然であり、民法上婚姻の届出をすること自体が想定されていない同性間の関係も含まれ得るとすることは、条文の解釈から逸脱するものといわざるを得ない。
  • 現行の法体系に照らして、「婚姻」、「配偶者」の定めは異性間の関係のみを意味すると解するべきであり、同性間の関係を含むと解することは困難である。
  • すなわち、憲法24条1項は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」、「夫婦が同等の権利を有することを基本として」などと定め、婚姻が異性間の関係であることを前提としており、婚姻関係を規定する民法も、異性間の関係を前提とした「夫婦」という表現が用いられているから(民法750条)、民法において定められた「婚姻」は、異性間に限られる。
  • しかも、犯給法5条1項1号の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。」につき同性間の共同生活関係を含むと解釈した場合には、遺族給付金の支給対象となる第一順位の遺族が変わることになるから、条文の文言を現行の法体系に整合的に解釈した場合の支給対象者が、遺族給付金の支給を受けられない場合が生じることになる。
    したがって、犯給法5条1項1号の解釈においては、控訴人が指摘する地方公共団体の上記事例(扶養手当の支給の場面)とは異なり、より強く法的安定性を意識することが求められるというべきであって、同性間の共同生活関係に対する社会の意識が変化しているなどの事情を根拠として、立法措置を経ることなく解釈を変更することは、法的安定性を害する結果となるといわざるを得ない。
  • なお、控訴人は、本件規定の解釈において、「社会通念」によって、個別具体的な事情にかかわらず、同性であることの一点をもって定型的に「事実上婚姻関係と同様の事情」にないなどと判断することは許されないとも主張するが、現行の法体系や犯給法の解釈上、本件規定の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に同性間の共同生活関係を含むと解釈することはできないとの結論は「社会通念」から導かれたものではない。そして、控訴人が指摘する社会的状況に関する種々の事情を考慮しても、上記の解釈を変更することが求められるまでの事情は見出すことができない。
  • 同性の犯罪被害者と共同生活関係にあった者につき「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」(犯給法5条1項1号)には該当しないとして本件申請を認めなかった本件処分に違法はなく、本件処分が憲法14条1項に違反するとか、憲法13条、25条2項の趣旨に違反するとも認められない

名古屋高裁の控訴審判決は、名古屋地裁判決からも大きく後退したものである。近年の性的指向に関する先進的な判決をことごとく否定するものである。この判決は、婚姻は異性間で行われるものであり、事実婚もそれに限られるべきとしたもので、性的指向に関するかつての差別意識そのもので、古い因習にとらわれたものというべきである。

控訴人代理人は、判決後の記者会見(※)で「共同生活者が殺害された場合、同性パートナーか、異性パートナーかということが、精神的な苦痛の大小を左右すると認められないと書いてありました。それでも遺族とは認めてもらえなかった。パートナーが殺された悲しみが同じでも、社会的な意識が足りないからダメだと言うなら、これを差別というのではないのですか」と述べた。まさにその通りと言うべきである。

※ PRIDE JAPAN 2022年8月27日記事「犯罪被害者給付金不支給訴訟で名古屋高裁が控訴を棄却、「社会的な意識が醸成されていなかった」


(2)参考となる同種判例

やや状況は異なるが、同性の事実婚が内縁関係としての法的保護を受け得る関係にあるかについて、宇都宮地真岡支判2019年(令和元年)9月18日控訴審:東京高判2020年(令和2年)3月4日)が注目すべき判断をしている。

宇都宮地方裁判所真岡支部は、次のように述べ、同性のカップル間の関係が内縁関係(事実婚)としての保護を受け得ると判断した。

  • 近時、価値観や生活形態が多様化し、婚姻を男女間に限る必然性があるとは断じ難い状況となっている。世界的に見ても、同性のカップル間の婚姻を法律上も認める制度を採用する国が存在するし、法律上の婚姻までは認めないとしても、同性のカップル間の関係を公的に認証する制度を採用する国もかなりの数に上っていること、日本国内においても、このような制度を採用する地方自治体が現れてきていること(甲13)は、公知の事実でもある。
  • かかる社会情勢を踏まえると、同性のカップルであっても、その実態に応じて、一定の法的保護を与える必要性は高いということができる(婚姻届を提出することができるのに自らの意思により提出していない事実婚の場合と比べて、法律上婚姻届を提出したくても法律上それができない同性婚の場合に、およそ一切の法的保護を否定することについて合理的な理由は見いだし難い。
  • また、憲法24条1項が「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」としているのも、憲法制定当時は同性婚が想定されていなかったからにすぎず、およそ同性婚を否定する趣旨とまでは解されないから、前記のとおり解することが憲法に反するとも認められない。
  • そうすると、法律上同性婚を認めるか否かは別論、同性のカップルであっても、その実態を見て内縁関係と同視できる生活関係にあると認められるものについては、それぞれに内縁関係に準じた法的保護に値する利益が認められ、不法行為法上の保護を受け得ると解するのが相当である

これは、きわめて先進的な判断だと言えよう。同性カップルであっても、内縁関係に準じた法的保護に値する利益が認められるとしたのである。

そして、これは控訴審の東京高裁判決において「控訴人及び被控訴人の本件関係が同性同士のものであることのみをもって、被控訴人が前記のような法律上保護される利益を有することを否定することはできない」として維持された。

本件は上告されたが、最高裁第2小法廷は上告を棄却した(※)ため、高裁判決が確定している。

※ 東京新聞2021年3月19日「同性カップルも不貞した相手に慰謝料請求できる 最高裁が初の法的保護決定


(3)最高裁の判断

さて、最高裁第三小法廷は、同性パートナーによる犯罪被害者等給付金の支給を認めなかった愛知県公安委員会の採決を妥当とした名古屋高裁の判決を取り消して差戻した。

  • 犯罪被害者等給付金の支給制度は、犯罪行為により不慮の死を遂げた者の遺族等の精神的、経済的打撃を早期に軽減するなどし、もって犯罪被害等を受けた者の権利利益の保護が図られる社会の実現に寄与することを目的とするものであり、同制度を充実させることが犯罪被害者等基本法による基本的施策の一つとされていること等にも照らせば、犯給法5条1項1号の解釈に当たっては、同制度の上記目的を十分に踏まえる必要があるものというべきである。
  • そして、同項1号が、括弧書きにおいて、「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」を掲げているのも、婚姻の届出をしていないため民法上の配偶者に該当しない者であっても、犯罪被害者との関係や共同生活の実態等に鑑み、事実上婚姻関係と同様の事情にあったといえる場合には、犯罪被害者の死亡により、民法上の配偶者と同様に精神的、経済的打撃を受けることが想定され、その早期の軽減等を図る必要性が高いと考えられるからであると解される。しかるところ、そうした打撃を受け、その軽減等を図る必要性が高いと考えられる場合があることは、犯罪被害者と共同生活を営んでいた者が、犯罪被害者と異性であるか同性であるかによって直ちに異なるものとはいえない
  • 犯罪被害者と同性の者であることのみをもって「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当しないものとすることは、犯罪被害者等給付金の支給制度の目的を踏まえて遺族給付金の支給を受けることができる遺族を規定した犯給法5条1項1号括弧書きの趣旨に照らして相当でないというべきであり、また、上記の者に犯罪被害者と同性の者が該当し得ると解したとしても、その文理に反するものとはいえない。
  • 犯罪被害者と同性の者は、犯給法5条1項1号括弧書きにいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当し得ると解するのが相当である。
レインボーフラッグを手にする女性

※ イメージ図(©photoAC)

なお、本判決には、上告を棄却すべきとする補足意見が付されているが、ここでは省略する。関心がある方は、原典を参照して欲しい。

本判決は、犯罪被害者等給付金の支給制度の趣旨から、犯罪被害者と同性の者であっても「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」と解し得るとしているのである。

犯罪被害者等給付金の支給制度が救おうとしている事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者は、異性のカップルの場合であろうと同性のカップルの場合であろうと、何ら変わることはないではないかと言っているのである。あまりにも当然のことと言うべきであろう。

これだけ自明なことを言っているのである。第一審からかなりの年月が過ぎており、一審原告に対する速やかな救済という観点からは、筆者としては差戻ではなく自判でケリをつけて欲しかったところではある。


2 本最高裁判決の意義

(1)差戻し審は、取り消した上級審の判断に拘束される

差戻し審がどのような判断をするかは現時点では何とも言えないが、裁判所法第4条及び民訴法325条第3項によって、再戻し審においては、原審を破棄又は取消した上級裁判所(この場合は最高裁)の判断に拘束されることになる。

すなわち、名古屋高裁の差戻し審では、「犯罪被害者と同性の者は、犯給法5条1項1号括弧書きにいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当し得る」という判断を変更することは許されないのである。

従って、第一審原告が勝訴する可能性が極めて高いと言ってよい。場合によっては、愛知県公安委員会側が判決を待たずに、採決を取り消すことも考えられよう。


(2)影響を受ける法令

残念ながら民法の相続に関する規定には、「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」という規定はなく、同性カップルが相続について配偶者と同様な権利を認められることはない。

しかしながら、わが国の法令で「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」という表現のある法令はかなりあるのだ。例えば、労働者災害補償保険法雇用保険法厚生年金保険法児童扶養手当法などである。これらを含めて、法律(30)、政令(12)及び省令(31)で合計 73 存在している。

今回の最高裁判決により、これらのすべての法令について、同性カップルについて事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者と認めるかどうかの問題が出てくるのである。政府や地方自治体などの窓口としては、少なくとも同性パートナーからこれらの法令に規定する給付金等の請求があった場合に、窓口のレベルで門前払いをすることは許されないこととなろう。

ある意味で、きわめて影響の大きい判決だと言え、同性愛者の権利拡大にとって重要な意味を持つ判例といえよう。


(3)同性婚の実現への影響

ア 札幌高裁判決の上告審への影響

問題は、この判決が先日の同性婚を認めないことは違憲であるとした札幌高判2024年(令和6年)3月14日の上告審に与える影響であろう。

札幌高裁で問題となったのは同性婚を認めないことの違憲性であるのに対し、こちらは犯給法の解釈の問題であるから別物であり直接の関係はないかもしれない。しかしながら、同性カップルと異性カップルで、受ける利益に区別(差別)があることに合理性があるかという意味においては同じことである。

その意味では、同性婚を認めていない現行法制度について、違憲であるとの判断が出せやすくなったということは言えるだろう。


イ 同性婚論争への影響

同性婚を認めるべきか否かの国民的な論争は、認めて構わないという方向へ動きつつある。これに反対する論者は、同性婚を認めることは①少子化を加速する、②国民的な理解が得られていない、③婚姻という制度を変質させる、④他の方法で救済するべきなどと主張することが多い。

このうち、①少子化を加速するなどというのはまったく根拠のない議論である。②国民的な理解が得られていないというのも、各種の世論調査などで完全に否定されている。③婚姻という制度を変質させるというのも、変質させることが悪いことだという根拠がない。いずれも、まったく根拠のない空疎な論理に過ぎない。

最近になって、④他の方法で救済するべきという主張がみられるようになっている。そのような主張をする者にとって、この最高裁判決は逆に追い風と感じられるかもしれない。

しかし、そもそも結婚という手段ではなく、他の方法で解決するという発想そのものが差別と言うべきであるし、同性婚を認めればよいのに他の方法で救済するという回りくどいことをする必要性はないのである。

この最高裁の判断が、同性婚に反対する者たちに利用されることのないようにするべきであろう。


3 この判決を契機に、同性婚を認めさせよう

男性同士のカップル

※ イメージ図(©photoAC)

本来、同性婚が認められていれば、原告は結婚という手段をとることによって、このように長期間の訴訟という費用と精神的な負担を要することをする必要もなかったのである。

その意味で、本件は同性婚が認められていないために同性愛者が受けている不利益がいかに大きいかの証明であると言えよう。

この訴訟に勝訴し、同性者同士のカップルに「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」として認められたとしても、結婚できないという不利益が存在することに変わりはないのである。

もちろん、本判決は大きな一歩前進ではあるが、それは本質的な解決ではないのである。結婚を選ぶか事実婚を選ぶかは、異性間であると同性間であるとを問わず、当事者が決めることができるようにすることが本来の姿である。

この判決を契機に、同性婚を認めさせるための努力をさらに進めてゆく必要がある。


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