人権感覚に欠ける自民党


自民党の三重県議会議員の小林たかとら氏が、同性愛カップルである市民の住所、電話番号をブログに公開するという暴挙を行ないました。

このため、この市民は、批判派からの非通知の電話攻勢にさらされて、精神的に病んでしまわれたといいます。市民の住所、電話番号を自身のブログに公開する行為は、嫌がらせ電話を幇助していると考えられ、人権感覚が欠如した自民党県議会議員の行為はきわめて悪質なものです。

小林たかとら氏に対して強く抗議します。




1 市民の個人情報を暴露する自民党県議会議員

執筆日時:

最終修正:

筆者:平児

自民党の三重県議会議員が、市民の住所、電話番号をブログに公開するという暴挙を行っている(※)。このため、批判派からの非通知の電話攻勢にさらされて、この市民は精神的に病んでしまわれたという。

※ AERA.dot4月6日記事「住所と名前を三重県議に公表された同性カップルが激白『電話が鳴り続けて精神的に病んでしまった』

この県議会議員は自民党の小林たかとら氏。ある市民が小林県議の政治的なtweetに対して、公開質問状を送ったところ、その市民の電話番号等をブログに公開したのである。小林県議は「公開質問状を取り下げるのなら、住所などを削除する」と市民に伝えた(※)ので、市民はやむを得ず公開質問状を取り下げたという。

※ AERA.dot4月6日記事「同性カップル住所無断掲載の三重県議を直撃 反省や謝罪の言葉なし


2 小林県議の質問状に対する回答の欺瞞性

(1)小林県議の回答と基本的なスタンス

個人情報ばく露の問題に触れる前に、まず小林県議の公開質問状の内容の問題点に触れておこう。小林県議の公開質問状への回答は現在も公開されている(※)が、もとの質問状が、小林県議の個人情報削除とのバーターで削除されてしまったので、現在は一方的な主張のみが公開されている状態である。

※ 小林たかとら「公開質問状に対する回答

小林県議は「一方的に質問を突き付け回答を「要求」する姿勢は非常に攻撃的で敵意を感じますし、議論の末の相互理解を求める歩み寄りの余地を感じ取ることが出来ません」として、市民からの質問を最初から「攻撃的」と感じておられるようだ。

県民税から歳費を受けて県の行政に携わっている以上、県民は質問をして回答を求めることがあり得るとは考えていないようだ。なお、小林県議は「私は同性婚には反対の立場です」と明言しておられることを公平のために紹介しておく。


(2)札幌地裁判決をめぐるフェイク

さて、小林県議の回答では、「札幌地裁の判決でも憲法の24条が異性間の婚姻を定めた条文である事は確認されています。憲法解釈によって同性婚をみとめる事は不可能であり、同性間の関係を婚姻として法的に定める事を求めるであれば憲法改正が必須だ」としている。

これはフェイクである。同性婚に対して、様々な意見があり得ることは当然だし、そのことを表明すること自体には何も言うつもりはないが、フェイクを流すことは卑怯である。札幌地裁判決が憲法の24条が異性間の婚姻を定めた条文であるとしたのは、異性婚について24条が触れていないとしているのであり、同性婚をどう法律で定めるかは、憲法24条とは無関係なことだと言っているのである。

札幌地判はその上で、同性婚を認めないことは14条に違反すると言っているのである。小林県議の主張は札幌地判の“切り取り”であり、まさに明白なフェイクだといえよう。


(3)意味不明な鈴木教授への批判

さらに、小林県議は、鈴木教授の「パートナーシップ制度は国を変えるテコ」という考え方に「同性愛者が真の意味で夫婦として認められる事を求めるのであれば、鈴木賢教授の主張に反対の声をあげるべき」としておられる。しかし、理由が書かれておらず意味不明である。

なお、パートナーシップ制度はもちろん同性婚そのものではないが、「国を変えるテコ」という考え方は正しいものである。同性婚推進派が、反対の声をあげるかどうかについて、反対派の小林県議があれこれ言うのはお門違いである。


(4)差別の温存にクローゼットの方を持ち出す卑劣

小林県議は、同性婚に反対する理由を「クローゼットですので当然具体的な名前までは申し上げられませんが多くの当事者の方々から話を聞いております。彼ら彼女らは穏健に波風を立てずに今まで通り生きていきたいと望んでいると認識しています」と、クローゼットの方を引き合いに出す。

これは卑劣な主張と言うべきだ。クローゼットの方は、差別がある社会において、そのような考え方に至っておられる方も多いのである。差別があることを前提に、差別をなくすことは“波風をたてること”だと主張するのは、差別主義者の常とう手段である。


3 一般市民の個人情報を暴露することは許されるか

小林県議が、公開質問を行った市民の個人情報を暴露したことで、報道機関やSNSでも多くの批判が寄せられている(※)。現に、この市民は小林県議に個人情報を晒されたことで、大変な苦痛を味わっておられるのである。このようなことは、県議会議員であれば、当然に予想がついたことであろう。知っていてあえてやったと言われてもしかたがあるまい。

※ 毎日新聞4月5日記事「同性カップルの住所を三重県議がブログで公開 質問状に反論」、BUZZAP4月5日記事「【追記あり】同性カップルの住所氏名をブログで晒し上げた自民・小林貴虎三重県議の過去の発言をご覧ください」、東京新聞4月6日記事「伊賀市長「住所公開は人権侵害」 三重県議に抗議、性的少数者巡り」など

小林県議は、県議会議員という公人であり、その政治的な発言に対して市民の側が質問をするというのは、民主主義の発露であろう。公開質問状に対して非常に攻撃的で敵意を感じを感じるというところが、まず理解に苦しむ。しかも、その市民の個人情報をネットに挙げるという行為は、県議会議員ということをおいても許されない行為である。

当然のことながら、民法709条の不法行為に該当することであろう。このような人物が県議会議員をしていることに平児は恐怖を感じる。