1 稲田朋美氏によるフェイク
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筆者:平児
稲田朋美氏が、朝日新聞の「同性婚反対派へ『判決の全文読んで』稲田朋美氏に聞く」の中でとんでもないフェイクを主張しておられる。
同性婚を認めていない現行民法の規定が意見であるとした札幌地裁判決について、次のように述べておられるのだ。
【朝日新聞の稲田氏の主張】
判決は、家族制度のあり方は国民感情や社会状況によって決められていくべきだ、という趣旨も述べています。つまり、いきなり『同性婚を認めていないのは違憲だ』と言っているわけではないのです。
※ 朝日新聞の「同性婚反対派へ『判決の全文読んで』稲田朋美氏に聞く」より。
どうやら稲田氏は、同性婚を認めるかどうかは、自民党政府が決めればよいと判示されたと主張されたいらしい。冗談ではない。同判決は、明確に次のように述べているのだ。
【札幌地裁判決】
以上のことからすれば,本件規定が,異性愛者に対しては婚姻という制度を利用する機会を提供しているにもかかわらず,同性愛者に対しては,婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは,立法府が広範な立法裁量を有することを前提としても,その裁量権の範囲を超えたものであるといわざるを得ず,本件区別取扱いは,その限度で合理的根拠を欠く差別取扱いに当たると解さざるを得ない。
したがって,本件規定は,上記の限度で憲法14条1項に違反すると認めるのが相当である。
※ 「札幌地判令和3年3月10日令和3年3月17日 同性婚違憲訴訟」より。下線強調は引用者
疑問の余地はない。判決は立法府が広範な立法裁量を有することを前提としても,その裁量権の範囲を超えたものである
と明言しているのである。稲田氏は、明白な嘘をついているのだ。
2 内縁関係を認めてやればいいとうそぶく稲田朋美氏
さらに、稲田氏は札幌地裁判決について、姑息なごまかしをしようとしておられる。
【朝日新聞の稲田氏の主張】
異性間でも、事実婚の内縁関係に認めている権利がありますよね。そうしたものさえ全く認めていない現状が問題視されたと考えています。
※ 朝日新聞の「同性婚反対派へ『判決の全文読んで』稲田朋美氏に聞く」より。
同性婚を認めなくても、事実婚の内縁関係と同様な権利を認めてやれば、違憲ではないと、おどろくべきすり替えをしているのである。実際には、判決文には「内縁」だの「事実婚」だのという言葉は使われていない。むしろ判決文は、婚姻について次のように述べており、内縁関係を認めるだけでは、婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しない
ので違憲であるとしているというべきである。
【札幌地裁判決】
婚姻とは,婚姻当事者及びその家族の身分関係を形成し,戸籍によってその身分関係が公証され,その身分に応じた種々の権利義務を伴う法的地位が付与されるという,身分関係と結び付いた複合的な法的効果を同時又は異時に生じさせる法律行為であることは,上記(2)アで説示したとおりであり,婚姻によって生じる法的効果の本質は,身分関係の創設・公証と,その身分関係に応じた法的地位を付与する点にあるといえる
※ 「札幌地判令和3年3月10日令和3年3月17日 同性婚違憲訴訟」より。下線強調は引用者
確かに、札幌地裁判決は、同性婚を異性婚と全く同じ形で認めることまでは求めてはいないが、内縁関係に認めている権利を付与するだけでは、婚姻を認めたことにはならないと明確に述べているのである。戸籍によってその身分関係が公証され
ない限り、違憲状態は解消されないとしていることは、判決文の全体からも明らかである。
3 保守の思想は、個人の幸福よりも優先すると宣言する稲田朋美氏
そして、最後にこう述べて、自らの「保守の立場は、国民一人一人の幸せよりも大切だ」と宣言するのである。
【朝日新聞の稲田氏の主張】
先日もある人に言われたんですよ。『多様性を認めること』や『寛容であること』は保守の必要条件だが、十分条件ではないと。保守と名乗る以上、先人が築き上げてきたものや、これまでの歴史を一足飛びに乗り越えるのは違うぞと。なるほどな、と思いました。
※ 朝日新聞の「同性婚反対派へ『判決の全文読んで』稲田朋美氏に聞く」より。
次の動画でも、稲田氏は「国民の政治が大事なんて政治はですね、私は間違っていると思います」と明言するのである。では、正しい政治とは何か? それは「先人から引き継いできた」思想だというのである。
国民の幸福よりも、保守思想の方が重要だと明言しているのである。私たちは、いつまで自民党政治を許しておくのだろうか?
稲田氏は、「自民党のLGBT理解増進法」や「選択的夫婦別姓制度」で “積極派” として知られているが、その本音はこのようなところにあるのだ。