- 1 五輪推進派が削除を求める不都合な真実
- 2 消され又は消されかけた報道とは
- (1)聖火の前方を走るスポンサーの宣伝車両の動画
- (2)五輪組織委による文藝春秋への雑誌回収等の要求
- 3 五輪に関する言論統制は許されない
1 五輪推進派が削除を求める不都合な真実
執筆日時:
筆者:平児
日本から報道の自由が消えかかっている。五輪をめぐり、1つの報道が消され、もうひとつに消そうという圧力がかかっている。
言論統制を行っているのは、五輪組織委とIOCである。これらの組織がわが国の報道に圧力をかけているのだ。
日本会議という右派組織の会員である橋本聖子氏が会長職に就いているとこういうことが行われるのであろうか。
2 消され又は消されかけた報道とは
(1)聖火の前方を走るスポンサーの宣伝車両の動画
消されたのは、東京新聞の原田記者がTwitterにアップした動画である。聖火の前方をスポンサーの宣伝車両が大音量の音楽を流しながら走行することを問題視したものだ(※)。これを、「メディアによる動画の公開は撮影から72時間に限る」というIOCの規定に従って削除したものである。
東京新聞3月26日「聖火リレー 大音量、マスクなしでDJ…福島の住民が憤ったスポンサーの「復興五輪」」に聖火の状況が記されている。
だが、これはおかしい。形式面だけ見ても、五輪の競技を撮影したものではなく、スポンサーの費用で走る宣伝車両の撮影であり、宣伝車両はIOCが費用負担したものではない。しかも、撮影されたのは公道である。
さらにおかしいのは、五輪の運営に批判的なTwitterだったということだ。たんなる五輪の記録ではなく、批判的な内容を消去するのは、言論の抑制であろう(※)。
※ 東京新聞4月2日「聖火リレー 私が五輪スポンサーの「お祭り騒ぎ」動画をTwitterから削除した理由」など参照
(2)五輪組織委による文藝春秋への雑誌回収等の要求
そして、もうひとつが五輪組織委による文藝春秋社への「週刊文春4月8日号の回収とネット記事の削除」の要求である。文春は、当然のことであるが、ただちにこれを拒否している(※)。
※ 文春オンライン「「週刊文春」はなぜ五輪組織委員会の「発売中止、回収」要求を拒否するのか――「週刊文春」編集長よりご説明します」
文春側が拒否するのは当然であろう。五輪は私的な競技会ではない。公金が投じられる、公的なイヴェントなのだ。
しかも、五輪組織委が削除の要求を出したのは、開会式で差別的な内容の演出がされることを批判的に報じた記事なのである。これは、報道の自由の範囲内のものであり、このような報道を公的な機関である五輪組織委の側から抑圧しようとするのは、公機関による言論弾圧であり容認できるものではない。
おそらく、差別的な演出を行った五輪組織委の側が、責任者の佐々木氏が辞任せざるを得なくなったことに対する意趣返しとして行ったものであろう。
3 五輪に関する言論統制は許されない
これらは、五輪開催について行われた小さな事件のように思われるかもしれない。しかし、その本質は、公的な機関による言論の抑圧である。このような事件のひとつひとつを見逃さずに、抗議の声を上げることが民主主義を守るということだと思う。