東北新社利益供与事件

「完全に別人格ですから」

総理はそう胸を張った。２月４日の衆院予算委員会でのことだ。もちろん、官僚接待疑惑の渦中にあるご子息に関してのことだ。

さらに２月15日の予算委員会では、「『自分のことは自分で責任をもって生きていく』と強く言って育ててきた」と、子育て論をぶち上げた。子供が、不祥事を犯したとしても、それは自らの責任でやったことで、自分は関知しないと言いたいらしい。

これについて、さすが総理と思われた国民もいたのではないだろうか。不祥事を犯した息子を突き放し、自らの地位を利用して救ったりはしないと宣言したともとれるからだ

ところが、そうではなかったのだ。報道各社は、菅氏が初入閣を果たしたときに、長男を秘書官に抜擢したと報じた。秘書官は公務員だから国民の税金で給与が支払われるのだ。公私を混同して長男を支援したとしか言いようがないだろう。

さらに、２月21日の文春オンラインの記事「『完全に別人格ですからね』菅首相発言は本当か……“違法接待”長男のこれまでを検証する」によると、東北新社の創業者は菅総理の後援者だという。こうなってくると、長男が東北新社に入社したのは、能力や経験が評価されたからではなく、別な理由があったに違いないと国民が考えても不思議はない。

古代から近代まで、権力者の一族が専横を振るったために衰退した国家は多い。古くは古代エジプトのネフェルティティの専横が国家を傾け、近代では中国の西太后が清帝国滅亡の原因を作った。それまでも、漢帝国以来、歴代中国帝国は外戚（皇后の一族）の専横に悩まされ続けていた。そのため、皇帝の中には、皇太子を産んだ妃を、子供が幼いうちに理由を付けて処刑して外戚の専横を防いだケースがあるほどなのだ。

国民は、間接的とはいえ総理を選んでいることは事実だ。だが、誰も菅氏の長男に、国政に影響を与えて欲しいなどとは望んでいないのである。

菅氏の親族に関しては、文春オンラインが「破産した弟がなぜJR企業の役員に？」と報じている。こうなってくると、菅政権も古代漢帝国の皇帝並みではないかと思えてくる。

菅氏の長男は、東北新社に入社すると、異例の昇進をする。２月22日の Business Journal「総務省接待：菅首相の長男、東北新社「中途入社の経緯＆異例スピード出世」が“不可解”」によると、20代で中途採用され30代で取締役に就任しているとされる。

そして、総務省相手の接待の場にも顔を出すようになるのだ。これでは、菅氏の長男であることを利用した接待要員として採用されたと理解されても仕方があるまい。いや、むしろそう考える方が自然だろう。

先の Business Journal 記事によると、東北新社と言うのはよほどの能力がないと簡単に入社できる会社ではないという。にもかかわらず、無名のバンドマンから、父親である大臣の秘書官を９か月経験した人物が、入社してごく短期間で取締役になったとすれば、首相の長男であることに東北新社側がなんらかのメリットを感じていたからだとしか思えない。

そして、常識的には、それは本人とその親も分かっていたと考えるのが自然だろう。それ以外に、このような人物を入社させて、短期間に取締役にする理由が考えられないのである。そして、現に、接待係として働いてるのだ。だとしたら、本人も親も十分に理解していただろう。

安倍前総理の夫人が、奔放な言動で批判を浴びたことは記憶に新しい。一人の私人として活動されるなら、何も言うつもりはない。しかし、国から秘書官を付けられているとなれば、話は別である。公人としての色彩を帯びるのだ。批判を浴びて当然だろう。

しかも、菅氏の長男の行為は、安倍夫人とはさらに悪質である。こちらは、犯罪行為の疑いが濃厚なのである。現に、接待を受けた側は、非行行為として処分を受けたり、辞任したりしている。安倍氏の長男も東北新社を退職する意向のようだが、犯罪的な行為であると認めているからであろう。

そして、それは、菅氏自身の問題でもある。東北新社と菅氏の関係は深く、菅氏は長男を大臣秘書官とした公私混同の経験があり、東北新社では長男という立場で役人を接待しているのである。とても無関係とは言えない。

この問題について、とても分かりやすい動画を紹介させていただきます。みーちゃんの政治チャンネルの動画ですが、とても分かりやすく政治問題を解説しているチャンネルです。

※　2021/03/06 総務省】東北新社の法律違反は見逃された？外資規制違反問題を解説【放送法】

※　2021/02/28 総務省接待問題を読み解くための基礎知識【総務省 - 東北新社】

平児もチャンネル登録をして、勉強させて頂いています。