1 首相が「まず自助」を変えない理由が酷い
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筆者:平児
「自らの創意工夫でコロナ禍でも、事業を伸ばしている人がいる」
総理はそう答えた。それが「まず自助」を変えない理由なのだそうだ。3月4日の朝日新聞デジタルが報じている。同日の参院予算委員会で、自民党議員の質問に答えたものだ。
このくらい、国民を馬鹿にした話はない。コロナ禍で業績を伸ばしているのは、ネット関連の事業が多い。そういう人々がいることを理由として、観光関連事業や飲食業、さらには小規模のライブハウスに対して「努力不足」と言っているのだ。
また、非正規労働者に対して、コロナ禍の中でどうやって「自助」をせよというのか。自由な働き方を望んでいる者もいるなどと言って、非正規労働者を急増させたのは、どの政府なのだ。企業から、明日から働かなくて良いと言われて、どう努力しろと言うのか。
シングルマザーで、朝は新聞配達をし、昼はパートで働き、夜は居酒屋で働いている女性がいる。その合間に、寝る間も惜しんで子供に食事をさせている。いったい、どうやってこれ以上「自助」をせよというのか。
2 まず「公助」が必要だ
総理は「自らの創意工夫でコロナ禍でも、事業を伸ばしている人がいる」という。それは確かにそうなのだろう。だが、この国は、努力すれば必ず報われるという社会ではなくなっている。
2016年に東京で「私たちは、『買われた』展」が開かれた。その中の女性たちの声を少しだけ紹介しよう。
小6で売春した。初回は5万円。母親に、『安いね』と言われた※ 籏智 広太「上履きを買うために売春した少女。貧困や性的虐待、中高生を追い込んだ現実」(2016年)より
助けてくれる人は、買春者しかいないと思っていた
両方とも、20歳前後の女性たちの声だ。そして、これはわずか5年前のことなのだ。
また、中村淳彦氏は、2016年の東洋経済オンラインの記事「中学生が売春に走る沖縄の貧困の残酷な現実」で、風俗で働かざるを得ない女性たちをルポしている。
この女性たちの前で、総理は同じことが言えるのだろうか。「自助」や「共助」を求める前に、彼女たちには何よりもまず「公助」が必要なのだ。
3 生活保護を受けること、それは権利だ
他の記事でも述べたが、平児の師匠の柳川氏も子供時代は、母子世帯で育っている。そして生活保護を受けていた。生活保護を受けていたというと、自民党の片山さつき氏から非難を受けそうだが、あえて言おう。
だが、菅総理、そして片山氏、あなたがた聞きたい。と言っても絶対に答えてはいただけないだろうが。
- あなたたちは、子供時代に夕飯に茶碗に半分程度のご飯しかなくて、お腹を空かせて眠れなかったことはありますか?
- あなたたちは、子供時代に夕飯のおかずが塩だけだったことがありますか? 胡麻も何も入っていない塩だけだったことがありますか?
- これは、柳川氏が子供時代に経験したことです。それでも、あなたたちは、生活保護受給者をパッシングするのですか?
厚生労働省が言ってるように、生活保護は権利なのだ。
4 「自助」のためにも「公助」が必要なのだ
柳川氏とその兄弟の方たちは、生活保護は受けたけれど全員が中卒で働いて自立している。そして、柳川氏は自力で大学を卒業した。こう言っては何だが、大学卒業後は、日本人の平均賃金よりは高い収入を得ていた。すなわち、平均的な日本人よりも多くの税金を国に納めたということだ。
だが、生活保護がなかったらどうなっていたかを想像することは恐ろしいという。子供の頃に、一家心中や餓死していた可能性もあるだろう。私に言えることは、そうなれば、国は、その人が納めた税金を受け取れなかったことだけは間違いないということだけ。
最後に、雨宮処凛氏のブログを紹介しておこう。雨宮氏は「生活保護世帯の高校生に起きていること。の巻」の中で、奨学金を受けたら生活保護がそれと同じ額を引き下げられた高校生の家族を紹介しておられる。
こんなことをしていたら、我が国の若者が、その持てる能力を発揮することができなくなる。ひいては国の活力を奪うことになると、なぜ自民党政府は理解できないのだろうか。