2019年の参院選における各党のSNSの活用状況を題材に、国内の個人や少数派によるSNSの発信状況なども紹介しながら、SNSが国内の少数派にとって有効なメディア足り得るのか、またどのように活用されるべきかについて検討しています。
1 はじめに
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筆者:柳川行雄
(1)参院比例区の得票率とツイッターの投稿数の比較
2019年8月2日の朝日新聞※1は、参院選比例区の各党の得票率とツイッターの投稿数の割合の比較をグラフにして示している。これによると、自民党は比例区の得票率が35.4%なのに対しツイッターの投稿数では30.7%と、得票率の方が高くなっている。同様に得票率の方が高かったのは、公明党が比例区13.1%、ツイッター7.1%、立憲民主党が比例区15.8%、ツイッター11.5%、国民民主党が比例区7.0%、ツイッター1.8%となっている。
※1 2019年08月02日朝日新聞DIGITAL「SNS上の話題、各党明暗 参院選分析」
これに対し、れいわ新選組は比例区4.6%、ツイッター17.8%と圧倒的にツイッターの方の比率が高い。同様な傾向は共産党も同じで比例区9.0%、ツイッター16.5%とこれもツイッターの方の割合がかなり高い。
(2)政党の性格とツイッターの活用度
朝日新聞が分析している9政党では、ツイッターの方の比率が高いのは、れいわ新選組、共産党、NHKから国民を守る党(以下「N国党」という。)の3党のみである。なお、維新党と社民党は、比例区とツイッターの割合がほとんど変わらない。
要するに、事業者団体の組織票のある自民党、宗教団体の組織票のある公明党、労組などの組織票のある立憲民主党は、ツイッター数の割合よりも得票率の方が高いということなのであろう。
一方、古典的な組織による集票活動による支援のない政党では、比例区の得票率よりもツイッター数の割合の方が高くなる傾向があるといえよう。すなわち、SNSは、組織力のない少数勢力にとって、有効なメディアとなる可能性を秘めているといえる。
意外なのがN国党で、ツイッターの方がやや高めではあるが、比例区2.0%、ツイッター2.9%とそれほどツイッターの方の比率が高いというわけではない。N国はいうまでもなくネットと親和性が高く、地方議員の中には議員になるまでネットを活動の場としていたというケースもある。ただ、この朝日新聞の記事を見る限り、必ずしもSNSの活用に成功していないようだ。
(3)政党とツイッターの投稿数
ただ、ツイッターの投稿数の多い順は、自民党30.7%、令和新選組17.8%、共産党16.5%、立憲民主党11.5%、維新党9.7%と続いており、絶対数では自民党が群を抜いている。安倍晋三首相は、著名な芸能人と写真を撮って首相官邸のインスタグラムに多数アップするなど、SNSにかなりの力を入れており、これがツイッターを通して拡散した可能性がある。
もっとも、安倍政権の幹部の考え方は、いわゆるネット右翼と親和性があり、2009年には自民党ネットサポーターズクラブが立ち上げられている。SNSの投稿に熱心なネット右翼が投稿の絶対数を押し上げた可能性もあろう。とりわけネット右翼は複数のアカウントを持つことも多く、一部にはボットを開発して投稿数を増やすケースもあると言われ、実際の投降者の数はそれほど多くない可能性がある。
一方、国民民主党はツイッター1.8%、社民党もツイッター2.0%と、この2党はSNSの活用がかならずしも成功していないようだ。国民民主党は、そもそもSNSを重要視していないのかもしれないが、小規模な政党である社民党がSNSを活かし切れていないのは、支持者の層がSNSを用いる層とは異なるからかもしれない。
(4)小規模政党によるツイッターの活用状況
同じ小規模政党でも、歴史のある社民党がツイッターの割合でも、比例の得票率でも、新しい勢力である令和新選組に及ばなかった。
当初は「諸派」という扱いだった令和新選組が、比例区で既存政党の社民党を上回る2議席を得た大きな要因のひとつとして、SNSの活用ができたからという面もあるだろう。
自民党は後述するように、大金をかけてネットの活用を図った。社民党がツイッターの活用が不十分なのは、資金力が不足しておりSNSの活用ができなかったという面も否定はできない。
すなわち、現状では必ずしもSNSがすべての少数派に恩恵をもたらしているとは限らないのである。しかし令和新選組の成功が示しているように、カネをかけなくても活用できた例もある。組織票のない小規模政党でもネットが動くことによって、その支持が広がる道筋があるということだ。