日本国民は2019年6月の参院選において、自民、公明及び維新の改憲派に対して3分の2の議席を与えませんでした。また、朝日新聞の同年9月の世論調査でも、安倍政権のもとでの改憲に「賛成」は33%、「反対」が44%と反対の方が上回っています。日本国民の多くは、明確に安倍改憲に反対しているのです。
しかしながら、安倍総理は、国民の意思に反して憲法改悪を「必ずや成し遂げていく」と強硬に推し進めようと諮っています。
安倍総理は、改憲によって「国民を守る」などと言っています。しかし、自衛隊がイラクに派兵されたとき、自衛隊撤退を主張する武装組織によって日本国民である香田証生氏が拉致されたとき自民党政府は国民を守ったでしょうか。自民党政府は「テロに屈することはできない。自衛隊は撤退しない」とし、救出のための有効な手立てをとることもなく、日本国民である香田氏は殺害されました。
安倍総理が、9条改悪を推し進めるのは、海外派兵、駆け付け警護など、米国による世界戦略の一環を軍事的に担おうとするものにすぎません。まさに米国の利益のために我が国国民を危険に陥らせるものなのです。
日本は、中東では好意的なイメージを持たれていましたが、近年の中東派兵によってそのイメージは壊れつつあります。国民を守るためには、何よりも中東を含む世界各国と友好の輪をつないでゆくことこそが、最も有効かつ現実的な方法なのです。
憲法を改悪することによって、再び国民に戦争の危険を強要しようとする安倍政権の策謀を許してはなりません。
- 1 はじめに
- (1)歴代自民党による米国の世界戦争戦略へわが国を巻き込む策謀
- (2)国民の危機感を煽る安倍政権
- (3)安保条約をめぐるフェイク
- 2 自衛隊の意欲を高めるという嘘
- (1)安倍総理の改憲の理由
- (2)緊急事態条項はなんのためにあるのか
- 3 国を守るには民間交流の推進が必要だ
- (1)戦争はいきなり起きるわけではない
- (2)戦争をなくすためには友好関係の構築こそ必要
- (3)そして各国の民主主義の確立こそが、為政者の戦争への行動を止めることができる
- 4 最後に
- (1)安倍総理の言う日本人を守るとはどういうことか
- (2)日本人は、米国の世界戦略に組み込まれることの意味を理解できているか
- (3)安倍改憲は、中東における米国の戦争に協力することだ
- (4)日本人を守るために必要なことは何か
1 初めに
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改訂日時:
筆者:柳川行雄
(1)歴代自民党による米国の世界戦争戦略へわが国を巻き込む策謀
ア 憲法9条に反しての戦力の保持・強化
自民党政府は、憲法9条によって立つ我が国の平和国家としての立場を、長年にわたって次々に有名無実化してきた。
1950年には警察予備隊が発足し、1952年8月には戦車や榴弾砲を保有して事実上の軍隊=戦力となった。1952年10月には警察予備隊は保安隊に改編された。そして、これを前身として1954年7月には陸上自衛隊と海上自衛隊が発足している。
イ 憲法に違反する海外派兵
米国との関係では、1997年に新たな日米協力のためのガイドラインが合意された。2001年にはテロ対策特措法が成立し、海上自衛隊の艦艇がインド洋に派遣されている。
そして2004年には米国の強い要求を受けて自衛隊がイラク(サマワ)に派遣された。すなわち、自衛隊が、米国の世界軍事戦略の中に組み込まれたのである。
まさに、小泉政権下において、我が国は独立国家としての主権を放棄してしまったといえよう。わが国は、米国の属国に成り下がってしまった感がある。
ウ 安倍政権による米国への主権の売渡し
そして、この状況は安倍政権という最悪の政権によってさらに深刻な状況となっている。
安倍政権は、憲法学者や国民の多数派の意思を無視して、2014年に集団的自衛権に関する政府解釈を変更したのである。このことは、「自衛隊は日本国民を守る」という建前を捨てたということだといってよい。自衛隊は、アメリカの軍事戦略の中で動く軍隊となったのである。
第二次大戦後、外国を攻撃した回数の最も多い国はいうまでもなくアメリカである。1983年のレーガン大統領によるグレナダ侵攻は「アメリカ市民の安全を確保する」ことを理由に行われた。そればかりか2003年3月20日のブッシュ大統領によるイラク攻撃は、予防戦争であるということを明言していた。このような戦争が国際法上、違法であることはいうまでもない。
集団的自衛権の容認によって、わが国は、米国が恣意的に引き起こす戦争に、いつ巻き込まれるかもわからない状況となったのである。
そして2015年、安倍政権は、またもや違憲であるという憲法学者の主張や、多くの国民の反対を無視し、安全保障関連法=戦争法を成立させた。
さらに2016年には、南スーダンにおける「駆け付け警護」を閣議決定した。わが国は、いつ戦争当事国になってもおかしくない状況に置かれたのである。
エ 安倍政権による憲法9条改悪は国民を守るためのものではない
そして今、安倍政権は、さらに一歩進んで憲法9条の改悪に進もうとしている。もちろん、これは「国民を守る」ためなどではない。米国の世界戦略に従って、中東で戦争行為を行うためである。
自衛隊が米国の要求に出イラクに派兵されたとき、自衛隊撤退を主張する武装組織によって日本国民である香田証生氏が拉致された。このとき自民党政府は日本国民である香田氏を守っただろうか。自民党政府は「テロに屈することはできない。自衛隊は撤退しない」とし、救出のための有効な手立てをとることもなく、日本国民である香田氏は殺害されたのである。
自民党政府は、国民の生命より米国の世界戦略への協力の方を重く見たのだ。憲法9条改悪もまた、日本国民を守るためではなく、米国のためなのである。